虎髯とらひげ)” の例文
二人の僧はもう一度青田のあいだを歩き出した。が、虎髯とらひげの生えた鬼上官だけはまだ何か不安そうに時々その童児をふり返っていた。……
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
武村兵曹たけむらへいそうその仲間なかまつて、しきりに愉快ゆくわいだ/\とさはいでつたが、何時いつ何處どこから聞知きゝつけたものか、れい轟大尉とゞろきたいゐ虎髯とらひげはぬつとすゝ
その大沢治郎左衛門が、虎髯とらひげの中から眼鼻を出して、むっそりと歩いて来たので、番所の兵は、もうごかさずに緊張していた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎髯とらひげの四十男で、あまり智恵のありそうな人間ではありませんが、様子と声の物々しさに、妙に狂信者の心をとらえそうなところがあります。
周章あわてて止めたのは、敵娼あいかた中将の白絹のような顔へ、虎髯とらひげの顎をしばしば寄せて、中将にひどく嫌われながら、自分では一人でいい気持ちになっている、千葉介貞胤で
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
汚れた小倉こくら霜降しもふりの洋服を着て、脚にも泥だらけのゲートルをまき、草鞋わらじいている。頭髪は長くはないが踏み荒らされた草原のように乱れよごれ、あごには虎髯とらひげがもじゃもじゃ生えている。
小さな出来事 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
言うことがしゃくに障った上に、酔って懐の玉を探ろうとしたので、癇癪かんしゃくを起してその横顔よこッつらを平手でなぐると、虎髯とらひげさかさにして張飛ちょうひのように腹を立て、ひいひい泣入る横腹をつけたばかりでは合点せず
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
虎髯とらひげの四十男で、あまり智慧のありさうな人間ではありませんが、樣子と聲の物々しさに、妙に狂信者の心をとらへさうなところがあります。
上流から一艘の舟をさおさして来て、美濃側の岸へ上がった、虎髯とらひげの武将がある。三、四名の従者も下り、一頭の乗馬も後から曳き下ろされた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎髯とらひげを逆立て、牡丹ぼたんの如き口を開け、丈八の大矛おおほこを真横に抱えて、近づきざま打ってかかろうとして来る容子。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、やがてそこへ駈け上ってきた張飛は、奔馬の上に蛇矛を横たえ、例の虎髯とらひげをさかだてて
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わからずやの虎髯とらひげめ。粗暴もいい加減にいたせ。関羽どのが一時、曹操に降ったのは、死にもまさる忍苦と遠謀があってのことだ。汝の如き短慮無策にはわかるまいが、謹んで矛を
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張飛の顔は朱漆しゅうるしを塗ったように燃えた。その虎髯とらひげの中から大きく口をあいて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関羽は、また彼の虎髯とらひげが、逆立ちかけてきたのを見て、眼で抑えた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振り向けば、豹頭炬眼ひょうとうきょがん、その虎髯とらひげも張飛にまちがいはない。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの虎髯とらひげを生捕れ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)