藁葺わらぶ)” の例文
藁葺わらぶき屋根の農家でも、あろうことか! この山の中に……近い村まで三里もあるという、この人っ子一人姿を見せぬさびしい山の中に
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
これに対して藁屋わらやすなわち藁葺わらぶきの家というのは、今やすでにどの府県に行っても、見られぬところはないというまでに広がっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……それは藁葺わらぶきの茅屋ぼうおくで、裏の方には汚らしい牛小屋だの、鳥や鵞鳥を入れて庇のようなものがついている。内部は二間に仕切られていた。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
藁葺わらぶきの家が何軒も立ち並んだ一構えがははその林に囲まれて、それに夕日がかっとさしているところに通りかかった。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
廊下が左へ曲がった外れに、離座敷はなれが立っていた。藁葺わらぶき屋根の、部屋数三間ほどの、古びた建物で、静けさを好む客などのために建てたものらしかった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おみやが案内したのは、牛の御前の社から長命寺へゆく途中で、藁葺わらぶき屋根の、古い農家ふうの家であった。
相模国さがみのくに石橋山いしばしやまの古戦場に近き杉山の一部。うしろに小高き山を負いて、その裾の低地に藁葺わらぶきの炭焼小屋。家内は土間にて、まん中にを切り、切株きりかぶ又は石などの腰かけ三脚ほどあり。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
青侍は、年相応な上調子うわちょうしなもの言いをして、下唇をめながら、きょろきょろ、仕事場の中を見廻した。——竹藪たけやぶうしろにして建てた、藁葺わらぶきのあばらだから、中は鼻がつかえるほど狭い。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まばらに立ち並ぶ街燈、並木のあいだにチラチラ見える一軒家、その駄菓子だがし屋らしい藁葺わらぶきの一軒家までたどりつくと、彼はいきなりガタピシと障子をあけて、そこの土間へのめりこんだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ココナッツの森を越すと、陽にたぎっている水田の展望だ。玉突台のような緑野の緩斜面だ。そこここに藁葺わらぶきの小屋がある。花壇のなかに微笑して建っている。マグノリアのにおいがする。
戸数こすう五百に足らぬ一筋町の東のはずれに石橋あり、それを渡れば商家あきんとやでもなく百姓家でもない藁葺わらぶき屋根の左右両側りょうそくに建ち並ぶこと一丁ばかり、そこに八幡宮はちまんぐうありて、その鳥居とりいの前からが片側町かたかわまち
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さいしょの藁葺わらぶきでも同じだったかもしれぬが、これがいったん発達して、専門のよい職工が出て国々をまわってあるき、ついに今見るような大きなみごとな草屋根を
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
藁葺わらぶきの古びたる二重家体。破れたる壁に舞楽の面などをかけ、正面に紺暖簾こんのれんの出入口あり。下手に炉を切りて、素焼の土瓶どびんなどかけたり。庭の入口は竹にて編みたる門、外には柳の大樹。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
飛び飛びに藁葺わらぶきの百姓家があった。ぼんやり春の月が出た。と一軒の屋敷があった。大名方の控え屋敷と見え、数寄すきの中にもいかめしい構え、黒板塀がめぐらしてあった。裏門の潜戸くぐりがギーと開いた。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これも藁葺わらぶきと同様に、その代りに用いはじめたものらしく、石よりはかるくて都合のよいこともあったが、石にはもと防火の目的はなく、ただ屋根板やねいたの風に吹き飛ばされるのを
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)