薄樺うすかば)” の例文
はや下晡ななつさがりだろう、日は函根はこねの山のに近寄ッて儀式とおり茜色あかねいろの光線を吐き始めると末野はすこしずつ薄樺うすかばくまを加えて、遠山も、毒でも飲んだかだんだんと紫になり
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
たちま心着こゝろづくと、おなところばかりではない。縁側えんがはから、まちはゞ一杯いつぱいに、あをしやに、眞紅しんくあか薄樺うすかばかすりかしたやうに、一面いちめんんで、びつゝ、すら/\としてく。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
芝茸しばたけとなへて、かさ薄樺うすかばに、裏白うらじろなる、ちひさなきのこの、やまちかたにあさきあたりにも群生ぐんせいして、子供こどもにも就中なかんづくこれが容易たやすものなるべし。どくなし。あぢもまたし。宇都宮うつのみやにてこのきのこくほどあり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
全体が薄樺うすかばで、黄色いぶちがむらむらして、流れのままに出たり、消えたり、結んだり、解けたり、どんよりと濁肉にごりじしの、半ば、水なりに透き通るのは、これなん、別のものではない、虎斑とらまだら海月くらげである。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)