落胤おとしだね)” の例文
かうむり候へ共是は私しの心付には御座なく全く伊豆守いづのかみ心付なり然共されども先達て將軍の御落胤おとしだねに相違なしと上聞じやうぶんに達し其後の心付なりとて一旦いつたん重役ぢうやく共申出し儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「壽阿彌さんが水戸樣の落胤おとしだねだと云ふうはさがあつたさうですが、若しあなたのお耳に入つてゐはしませんか。」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「それはあなたの方で一人でそう思っていられるのじゃないですか。あなた自身も知らないというような落胤おとしだねがあって、世に生存していたらおかしなものですな。」
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
向うの博士の落胤おとしだねだという母子おやこの家へ遊びに行ったり、神田の隠居の店へ出かけて行ったりした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
時々薄暗いかどに立って、町から見えます、山の方をながめては悄然しょんぼりたたずんでいたのだけかすかに覚えているんですが、人のめかけだとも云うし、本妻だとも云う、どこかの藩候の落胤おとしだねだとも云って
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うばとり旨々うま/\打點頭うちうなづき此後はわれ成長せいちやうして此品々を證據しようことし公方樣くばうさま落胤おとしだねと申上なば御三家同樣夫程迄それほどまでならぬも會津家あひづけぐらゐの大名には成べししかしながら將軍の落胤おとしだねなりとあざむく時は如何なる者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
縊殺しめころし御墨附御短刀をうばひ取十三歳にて師匠を毒殺どくさつし十四歳のはる紀州加田の浦にて盜賊たうぞくに殺されしていに取こしらへ夫より所々を徘徊はいくわいなし同類をかたらひ此度將軍家の御落胤おとしだね名乘なのり出候に相違御座なくしかと記し有を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)