荘重そうちょう)” の例文
旧字:莊重
それも此の楽器特有の潮の湧き起るような荘重そうちょうなのではなく、稽古でもして居るらしく、唯たど/\しくぽん/\いうだけの音である。
六日月 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
ちょうどそこは、大きな寺院の入口みたいな荘重そうちょうな大玄関であった。左右に何本かの石柱いしばしらが並び、石段がその間をぬって上へのぼっている。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
われらをして言はしめば歌を詠むには優美にも詠め、雄壮にも詠め、古雅にも詠め、奇警にも詠め、荘重そうちょうにも詠め、軽快にも詠めといはんとす。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それはまた我邦の祭祀さいしのすべてのものに伴なっていた要件で、特殊に重要なる稲という一つの穀物の収穫に際し、あらゆる荘重そうちょうなる儀式を備えて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その音は荘重そうちょうでゆるやかであった。雨にれた空気の中を、こけの上の足音のように伝わっていった。子供はすすり泣いていたが、ぴたりと声を止めた。
人々は野淵の荘重そうちょうな漢文口調の演説を旧式だと思いつつもその熱烈な声にせられて、狂するがごとく喝采した、手塚はきまりわるそうに頭を垂れた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ジナイーダはわたしの前に立つと、わたしを一層よく見ようとするかのように首を少し横にかしげ、いとも荘重そうちょうに片手を差伸さしのべた。わたしは眼の中が暗くなった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
大伴おおとも御行みゆき、粗末な狩猟かり装束しょうぞくで、左手より登場。中年男。荘重そうちょうな歩みと、悲痛ひつうな表情をとりつくろっているが、時として彼のまなざしは狡猾こうかつな輝きを露呈ろていする。………
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
ここでも、わざとしからぬ咳払いを一つして、荘重そうちょうに句切りをつけましたが、急に大きな声で
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
炎々えんえんと燃えあがった塔上とうじょうの聖火に、おなじく塔上の聖火に立った七人の喇叭手らっぱしゅが、おごそかに吹奏すいそうする嚠喨りゅうりょうたる喇叭の音、その余韻よいんも未だ消えない中、荘重そうちょうに聖歌を合唱し始めた
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
充分玄人くろうと的のその文章(3)必しも古く無いそのトリック(4)持ち重もりのするような荘重そうちょうな作風(5)気宇広濶な国際的の味、等々々、堂々たるもので、二十枚三十枚の作などに
印象に残った新作家 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、長良川博士はテーブルのまえに上半身をのりだし、きわめて荘重そうちょうな口調をもって
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このことばには荘重そうちょうなものがあって、厳として警告する態度はあなどり難いものがあったとはいえ、今、異様の風采ふうさいをして、ことには女にも見まほしいところの青年の美男子であるところに
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
意匠に勁健けいけんなるあり、優柔なるあり、壮大なるあり、細繊さいせんなるあり、雅樸がぼくなるあり、婉麗えんれいなるあり、幽遠ゆうえんなるあり、平易なるあり、荘重そうちょうなるあり、軽快なるあり、奇警きけいなるあり、淡泊たんぱくなるあり
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そのとき岸少尉は、きッと形を改め、荘重そうちょうなこえで
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)