荒野こうや)” の例文
従つて行為其物を目的として、円満に遂行する興味もたなかつた。彼はたゞ一人ひとり荒野こうやうちつた。茫然としてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よるは、くらそとに、木枯こがらしがすさまじくさけんでいました。そんなとき、たたく仏壇ぶつだんかねは、このいえからはなれて、いつまでもたよりなく、荒野こうやなかをさまよっていました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこは下総国しもうさのくに行徳村からざっと一里程ある寒村だった。いや村というほどな戸数こすうもない。一面にしのあしや雑木の生えている荒野こうやであった。里の者は、法典ほうてんはらといっている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見渡す限りひろびろとした荒野こうやの中や、いつ通りぬけられるかわからない森の中などに、いくにちも迷いこんだり、けわしい山のすそを遠くまわったり、雨が降って旅ができなかったり
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
今でも尋ねてみればまだまだ多くの例が集められそうに思われるが、そういう中でも印旛郡本埜もとの荒野こうや、十月十五日の雷公神社の祭日に、その年の新郎新婦が一組、特に盛装して社殿と寺
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「わたしはリューネブルクの荒野こうやの上をすべって行きました」と月が言いました。「道ばたに小屋が一軒いっけん、ぽつんと立っていました。葉の散り落ちたやぶが二つ三つ、そのすぐそばにありました。 ...
北方ほっぽう荒野こうやなかに、いぬうまけています。そのものがやがて、大軍たいぐんひきいてせてくるにちがいありません。あのおおきなほしひかりは、そのおとこ運命うんめいあらわすものでございます。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、けわしいやまのふもとの荒野こうやのできごとであります。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)