若者わかいもの)” の例文
そして、今日隣家となりの松太郎と云ふ若者わかいものが、源助さんと一緒に東京に行きたいと言つた事を思出して、男ならばだけれども、と考へてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
遊女屋の二階で柔術やわらの手を出して、若者わかいもの拳骨げんこつをきめるという変り物でございますが、大夫たいふが是にいらっしゃるのを知らないからの事さ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
イヤしからぬ野暮やぼいわるゝは都の御方おかたにも似ぬ、今時の若者わかいものがそれではならぬ、さりとては百両投出なげだして七蔵にグッともわせなかったさばき方と違っておぼこな事
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これを笑いずてに尻をまくった鯰の伝六を真先まっさきに、若者わかいものの立去ったあとで、口惜くやしい! とばかりぶるぶるとふるえて突立つったったが、愛吉は血だらけになっていたのである。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
狂言きやうげんのあらましを面白おもしろさうに話して、だん/\取入とりいり、俳優やくしや表方おもてかたの気にも入り、見やう聞真似きゝまね発句ほつく狂歌きやうかなど口早くちはや即興そくきようにものするに、茶屋ちやや若者わかいものにはめづらしいやつと、五代目白猿はくゑん贔屓ひいきにされ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
定次郎の実直といへば白井様でも大事の用には特にり上げて使ふ位で、力自慢に若者わかいものを怒らせるだけが悪い癖だと、老人達としよりだちが言つてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と云われるのが嬉しく思いまして、しげ/\通いましたが、又市も馬鹿でない男でございますから、しまいには癇癪をおこして、藤助とうすけという若者わかいものを呼んで居ります。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そこです、」と、背後うしろから声を懸けたのは、二度目を配る夕景の牛乳屋の若者わかいもので、言い棄てると共に一軒置いて隣邸となりやしきへ入った。おもうにこの横町へ曲ろうというあたりで、処を聞いたものらしい。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四晩に一度は屹度忍んで寝に来る丑之助——兼大工かねだいくの弟子で、男振りもよく、年こそまだ二十三だが、若者わかいもの中で一番幅の利く——の事も、無論考へられた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其のうち若者わかいもの多勢おおぜいにて清左衞門を取押えて大門おおもんの番所へ引く事に成りました。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若「えへ……御冗談ばかり、遊女屋の若者わかいもので、どうも誠にはやへい/\」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)