花立はなたて)” の例文
大甕おおがめ、酒甕、捏鉢こねばち徳利とっくり花立はなたてつぼ、これが広っぱに山のように積んである。博多はかたあたりの町を歩いて必ず荒物屋にあるのは、皆ここから供給される。
北九州の窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
小倉にはまだ乞巧奠きこうでんの風俗が、一般に残っているのである。十五六日になると、「竹の花立はなたてはいりませんかな」と云って売って歩く。盂蘭盆うらぼんが近いからである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
はたけに出てあか実付みつき野茨のばら一枝ひとえだって廊下の釣花瓶つりはないけけ、蕾付つぼみつき白菜はくさい一株ひとかぶって、旅順りょじゅんの記念にもらった砲弾ほうだん信管しんかんのカラを内筒ないとうにした竹の花立はなたてし、食堂の六畳にかざる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
仏壇の中には線香をくすべる香炉があります。香炉のそばには花立はなたてがあります。
でたらめ経 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
此風慶長頃特に盛んにしてあるいは奢侈しゃしの傾あり、支配掘家しはいほりけより四月八日山入厳禁の命あり、追々衰えたりしも、今も村田辺(三島郡島田村大字村田?)にこの遺風あり、名づけて藤の花立はなたてというと。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
水甕みずがめ、酒甕、大壺、小壺、鉢、土瓶、急須、茶碗、徳利、花立はなたて湯呑ゆのみ、皿、擂鉢すりばち、植木鉢、水注みずつぎ等々々。その範囲はいたく広い。小さな窯場でこれほど多様なものを造る所も珍らしい。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
一帳ひとはり男女名取中、葡萄鼠縮緬幕ぶどうねずみちりめんまく女名取中、大額ならびに黒絽夢想袷羽織くろろむそうあわせばおり勝久門弟中、十三年忌が三世の七年忌を繰り上げてあわせ修せられたときには、木魚もくぎょ一対いっつい墓前花立はなたて並綫香立男女名取中
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)