しゅん)” の例文
むかしぎょう御世みよに、娥皇がこう女英にょえいという二人の御娘がありました。堯がしゅんに世をゆずろうというとき、舜はこばんで受けません。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何という荘厳さだろう、しゅん帝と王が天下を治められたすがたは。しかも両者共に政治には何のかかわりもないかのようにしていられたのだ。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
らず、この語まことしかるや。孟子曰く、否、これ君子の言に非ず、斉東の野人の語なり。ぎょう老いてしゅんせつせるなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
どうして、天の命にそうことができるであろうか。ぎょうしゅんをえらんだのは、まことに、そのよろしきを得たものである。堯は、じつに、大聖人であつた。
せめて元田宮中顧問官でも生きていたらばと思う。元田は真に陛下を敬愛し、君をぎょうしゅんに致すを畢生ひっせいの精神としていた。せめて伊藤さんでも生きていたら。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
君子の音は温柔おんじゅうにしてちゅうにおり、生育の気を養うものでなければならぬ。昔しゅん五絃琴ごげんきんだんじて南風の詩を作った。南風のくんずるやもって我が民のいかりを解くべし。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
今、しゅんより生まるといえども、舜の神は必ずや瞽の生むところにあらず。すなわち商均しょうきんの神は、また舜の育するところにはあらず。生育の前、もとより麤妙あるなり。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
たとえば中国古代の聖天子しゅんは、徳において聖人であり、位において天子であり、富は国内のすべてを所有したが、舜の徳によって、その祖先は天子の礼をもってまつられ
しゅん何人ぞ我何人ぞとの気象、この短句に鬱勃うつぼつたるを見るべし。その花見の歌にいわく
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
孔子こうししゅんの韻学の中に、七種の音を発する木柱のあるのを知って茫然となったと云う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
我れ、しゅんの言を言い、舜の行を行わば、すなわち舜のみというそれである。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかしながら、権力移動の歴史から見るならば、多くの天皇には、人倫にそむく醜いものがあった。昔から日本の天皇は、ぎょうしゅんのような聖人君子ではなかった。
故に、ぎょうも天下をしゅんに譲り、舜は天下をに譲っている。いま漢室の政命尽き、曹操の実力は天下の三分の二を占むるにいたり、民心も彼に帰せんとしておる。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに論者は一方においては冗官じょうかんすべし、不急の土木を廃すべし、地税を減ずべしと疚痛惨怛きゅうつうさんたん、かのしゅんが歴山の野にすきによってたたずみ、旻天びんてんに号哭したるがごとく嘆訴すれども
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ぎょうしゅんに世をゆずった例と同じもので、天に応じ人に従ったものであるが、玄徳にはその徳もないのにかかわらず、ただ自ら漢朝の末裔まつえいだなどという系図だけを根拠として
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太師の徳望は、今や巍々ぎぎたるものですから、いにしえしゅんぎょうを受けたように、が舜の世を継いだように、太師がお立ちになれば、もう天下の人心は、自然、それにしたがうだろうと思います
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)