しゃぶ)” の例文
貧乏な人たちの子女が、わずかな金のために、身を縛られて、楼主といったような連中の餌食になって骨までしゃぶられていることです。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人目を避けて、うずくまって、しらみひねるか、かさくか、弁当を使うとも、掃溜はきだめを探した干魚ほしうおの骨をしゃぶるに過ぎまい。乞食のように薄汚い。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「末生りだよ。知らなければ教えてやる。君は末っ子だから、末生り瓢箪だ。お母さんの乳をいつまでもしゃぶっていたじゃないか?」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
尤ものちには悪友の悪感化を受けて、友達と一緒に近所の掃溜はきだめへ首を突込み、しゃけの頭をしゃぶったり、通掛とおりがかりの知らん犬と喧嘩したり
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しゃぶって居ると旨いが、醤油したじッ気が抜けると後はバサ/\して青貝を食って居るような心持で不思議な物で……ねえさん一寸ちょっと此処に居て遊んで
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
帳場のすすけたラムプを模した電燈の蔭に、向うむきに坐った見すぼらしい鳥打帽の男がチビリチビリとストローをしゃぶっているほかには誰も居ない。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「空乳首をやって見るとよい。」私がそういうと妻はすぐ空乳首をった。赤児は、っとしたようにそれをしゃぶり、くろぐろとした瞳を静まらせ泣きんだ。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
柿の枝などの年々なつかしい蔭を作るひさしのなかで、織機はたに上って、物静かにかちかちを運んでいる陰気らしい母親の傍に、揺籃つづらに入れられた小さい弟がおしゃぶりをしゃぶって
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
仮令たとえば、沙魚の餌付は、でも紳士の立食会に、眼を白黒してき合ひ、豚のあらしゃぶる如く、鮒は妙齢のお嬢さんが、床の間つきのお座敷に座り、口を細めて甘気の物を召し上る如く
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
人目を避けて、うずくまつて、しらみひねるか、かさくか、弁当を使ふとも、掃溜はきだめを探した干魚ほしうおの骨をしゃぶるに過ぎまい。乞食こじきのやうに薄汚うすぎたない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ギヤマンの切子鉢に盛上げた無花果いちじくしゃぶっていた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あえぐわ、しゃぶるわ! 鼻息はないきがむツとかかる。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あえぐわ、しゃぶるわ!鼻息がむッとかかる。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)