脚袢きやはん)” の例文
海向ひの村へ通ふ渡船は、四五人の客を乘せてゐたが、四角な荷物を脊負うた草靴わらぢ脚袢きやはん商人あきんどが驅けて來て飛び乘ると、頬被りした船頭は水棹みさをで岸を突いて船をすべらせた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
谷底へついて見ると紐のちぎれさうな脚袢きやはんを穿いた若者が炭竈すみがまの側でかしの大きなほたくさびを打ち込んで割つて居るのであつた。お秋さんが背負子しよひこといふもので榾を背負つてれた谷の窪みを降りて來た。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其時私は初めて脚袢きやはんをつけて草鞋をはいた。
百日紅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
でつ漸々やう/\東京こゝへはきしもの當處あてどなければ御行衛おゆくゑさらるよしなく樣々さま/″\艱難かんなん御目おめにかゝるをりめられぐさにとつはこゝろたのしみつゝいやしい仕業しわざきよおこなひさへがれずばと都乙女みやこおとめにしきなか木綿衣類もめんぎもの管笠すげがさ脚袢きやはん
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)