脊後うしろ)” の例文
あしみづなか投出なげだしたからちたとおも途端とたんに、をんな脊後うしろから肩越かたこしむねをおさへたのでしつかりつかまつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
児太郎は、くるっと脊後うしろ向きになると、肌を脱いでみせた。美しいふた峯の脊すじに、幾すじとない紫色を帯びた鞭のあとが、逡巡としてまざまざと残っていた。
お小姓児太郎 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
オイオイお前は何処どこへ行くと脊後うしろから声をかけたが、小僧は見向きもせず返事もせず、矢はり俯向きしまま湿れて行く、此方こなたれて、オイオイ小僧、何処へ往くのか知らぬが
河童小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
或人あるひと義母おつかさん脊後うしろからその脊中せなかをトンとたゝいて『義母おつかさん!』とさけんだら『オヽ』とおどろいて四邊あたりをきよろ/\見廻みまはしてはじめて自分じぶん汽車きしやなかること、旅行りよかうしつゝあることにくだらう。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あわいのある脊後うしろ脊負しょって、立留って、此方こなたのぞき込むようにしたが、赤大名の襤褸姿ぼろすがた、一足二足、そっちへ近づくと見るや否や、フイと消えた、垣越のその後姿。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)