脊広せびろ)” の例文
旧字:脊廣
制服の警部に巡査、脊広せびろ服の刑事に警察医、そしてそのうしろには、このホテルの主人と、私達を最初この部屋に案内したさっきのボーイが、青くなって控えていた。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひたいひろの大きな仏教に縁のある相である。ちゞみ襯衣しやつの上へ脊広せびろを着てゐるが、脊広せびろ所々ところ/″\しみがある。せいは頗る高い。瘠せてゐる所が暑さに釣り合つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それぞれ馬に乗ってその馬にはトランクに積め込んだ荷物を積んであった。馬は五匹いた。一番さきの馬には警察署長の制服を脱いで汚い脊広せびろを着たクラネクが乗っていた。
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大久保おほくぼ出発前しゆつぱつぜんよりも一そうあせつてゐたが、おとづれたのは、やはり竹村たけむらであつた。かれはロンドン仕立じたて脊広せびろこんでゐただけで、一ねんまへかれすこしもかはつたところはなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
堀木は、色が浅黒く端正な顔をしていて、画学生には珍らしく、ちゃんとした脊広せびろを着て、ネクタイの好みも地味で、そうして頭髪もポマードをつけてまん中からぺったりとわけていました。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
代助は洋卓テーブルふちを回って、平岡に近づいた。右の手で平岡の脊広せびろの肩を抑えて、前後にりながら
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
取澄してさえいれば、口髭くちひげなどに威のある彼のがっしりした相貌そうぼうは、誰の目にも立派な紳士に見えるのであった。小野田はきりたての脊広せびろなどを着込んで、のっしりした態度を示していた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
代助は洋卓てえぶるふちまはつて、平岡にちかづいた。右の手で平岡の脊広せびろかたを抑えて、前後にりながら
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや何所どこ彼所かしこも御無沙汰で」と平岡は突然眼鏡を外して、脊広せびろの胸からしわだらけの手帛ハンケチを出して、眼をぱちぱちさせながらき始めた。学校時代からの近眼である。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)