肉刀ナイフ)” の例文
三四郎の筋向にすはつてゐた色の白い品のい学生が、しばらく肉刀ナイフの手をめて、与次郎の連中を眺めてゐたが、やがて笑ひながら
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
阿父おやぢの大事な桜の木をつて、嘘一つき得なかつたジヨオージ・ワシントンが先づそれで、食事をするにはいつも肉刀ナイフで済ましてゐた。
さうして肉刀ナイフをとり、肉叉フオクをとつて話を逃れようとした。すると相手は給仕を呼んで、菓物とキユラソオを命じ、卷煙草に火をつけて落ついて話し出した。
其三四郎に取つて、かう云ふ紳士的な学生親睦会は珍らしい。よろこんで肉刀ナイフ肉叉フオークを動かしてゐた。其あひだには麦酒ビールをさかんに飲んだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それが代変りになつて、七代目のアンドリウ・ジヤクソンになると、またワシントン並に肉刀ナイフで皿をつゝつき出した。
先生はやがて肉刀ナイフ肉匙フォークを中途で置いた。そうして椅子を立ち上がって、書棚の中から黒い表紙の小形の本を出して、そのうちの或頁あるページを朗々と読み始めた。
西洋料理を食べるに、肉叉フオークを使はないで、何もかも肉刀ナイフで片づけてしまふ人がよくある。
胃が痛いので肉刀ナイフ肉匙フォーク人並ひとなみに動かしたようなものの、そのじつは肉も野菜も咽喉のどの奥へ詰め込んだ姿である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はその薄青いペンキの光る内側で、額に仕立てたミュンヘン麦酒ビールの広告写真を仰ぎながら、肉刀ナイフ肉叉フォークすさまじく闘かわした数度すどの記憶さえっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もう少し聞いている内にはあるいはあたりがつくかも知れないと思って、敬太郎けいたろうは自分の前に残された皿の上の肉刀ナイフと、その傍に転がった赤い仁参にんじん一切ひときれながめていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
食卓しよくたくは、人数にんず人数にんずだけに、左程大きくはなかつた。部屋のひろさに比例して、むしすぎる位であつたが、純白じゆんぱくな卓布を、取り集めた花でつゞつて、其中そのなか肉刀ナイフ肉匙フオークいろえてかゞやいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
食卓は、人数にんずが人数だけに、さ程大きくはなかった。部屋の広さに比例して、寧ろさ過ぎる位であったが、純白な卓布を、取り集めた花でつづって、その中に肉刀ナイフ肉匙フォークの色がえて輝いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)