ほう)” の例文
画家ゑかき仲間の達者人たつしやじんといはれた富岡鉄斎翁も近頃大分だいぶんほうけて来た。ずるい道具屋などはそれをい事にして、よく贋物にせものを持ち込んでは、うま箱書はこがきを取らうとする。
まぢくないの高聲たかごゑみんないとよびつれておもて出合頭であいがしら正太しようた夕飯ゆふめしなぜべぬ、あそびにほうけて先刻さつきにからぶをもらぬか、誰樣どなたまたのちほどあそばせてくだされ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その一人は城下に名高い、松木蘭袋まつきらんたいまぎれなかった。もう一人の僧形は、見る影もなく病みほうけていたが、それでも凛々りりしい物ごしに、どこか武士らしい容子ようすがあった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分が毎日物を書く一と間の前には、老いほうけたやうな、がた/″\の黒板塀が限られてゐる。
女の子 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
それ程ほうけたように見える父は、女にはいかにも心細かった。女はもう自分の運命が自分の力だけではどうしようもなくなって来ている事に気がつかずにはいられなかった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
叔父は随分病みほうけて居るけれど、余ほど回復したと見え、床の上へ起き直り
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
伊之助のことを思って病みほうけてるが、伊之助は吉原のよの字も若草のわの字もいやに成ったような不人情な心だから、自分が逢わないで物の解らねえ奉公人を出して、己を外へ突出しやアがって
あれ由斷がならぬと内儀かみさまに笑はれて、何がなしに耳の根あかく、まぢくないの高聲に皆も來いと呼つれて表へ驅け出す出合頭、正太は夕飯なぜ喰べぬ、遊びにほうけて先刻にから呼ぶをも知らぬか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あれ由断がならぬと内儀かみさまに笑はれて、何がなしに耳の根あかく、まぢくないの高声にみんなも来いと呼つれて表へ駆け出す出合頭であいがしら、正太は夕飯なぜ喰べぬ、遊びにほうけて先刻さつきにから呼ぶをも知らぬか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)