羽子はご)” の例文
しばらくすると、下の方では、またにぎやかに、羽子はごつきのひびきがきこえてきました。別の新しい羽子が高く舞い上っているのです。
屋根の上 (新字新仮名) / 原民喜(著)
甲戌早春の詩の後に、羽子はご、追羽子の二絶がある。亦此正月の作である。わたくしは其引の叙事を読んで奇とし、此に採録することとした。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
正月は奴婢しもべどもゝすこしはゆるして遊をなさしむるゆゑ、羽子はごつかんとて、まづ其処を見たてゝ雪をふみかためて角力場すまうばのごとくになし、羽子は溲疏うつぎを一寸ほど筒切になし
ぶんぶんという鳴弓の声、戞々かつかつという羽子はごの音。これがいわゆる「春の声」であったが、十年以来の春のちまた寂々寥々せきせきりょうりょう。往来で迂濶うかつに紙鳶などを揚げていると、巡査が来てすぐに叱られる。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ここにいたち係蹄けいていが仕掛けてあるよ」「あれがひよどりを捉える羽子はごだ」そして、「きのこを生やす木」などと島吉が指さすのを見ながら、これが東京とは思えなかった。月日のない山中の生活のようだ。
酋長 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
羽子はご手鞠てまりもこの頃から。で、追羽子おいはごの音、手鞠の音、唄の声々こえごえ
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羽子はごよ毬よみな母君にかくされて肩上かたあげあとの針目はりめさびしき
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
やり羽子はごや油のやうな京言葉
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
かちんと、羽子板はごいたにはねられると、羽子はごは、うんと高く飛びあがってみました。それから、また板に戻ってくると、こんどはもっと思いきって高く飛び上りました。
屋根の上 (新字新仮名) / 原民喜(著)
正月は奴婢しもべどもゝすこしはゆるして遊をなさしむるゆゑ、羽子はごつかんとて、まづ其処を見たてゝ雪をふみかためて角力場すまうばのごとくになし、羽子は溲疏うつぎを一寸ほど筒切になし
ぶんぶんという鳴弓の声、かっかっという羽子はごの音。これがいわゆる「春の声」であったが、十年以来の春の巷は寂々寥々せきせきりょうりょう。往来で迂闊うかつに紙鳶などを揚げていると、巡査が来てすぐに叱られる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女太夫とか鳥追とりおひの三味線さみせんにめでたき哥をうたひ、娘ののやり羽子はご、男の帋鳶いかのぼり、見るものきくものめでたきなかに、初日はつひかげ花やかにさしのぼりたる、新玉あらたまの春とこそいふべけれ。
空がこんなに深いのを羽子はごは今はじめて知りました。ひとつ一つの星はみんな、それぞれ空の深いことを考えつづけているのでしょう。一つ二つ三つ四つ五つ……と、羽子は数を数えてゆきました。
屋根の上 (新字新仮名) / 原民喜(著)
女太夫とか鳥追とりおひの三味線さみせんにめでたき哥をうたひ、娘ののやり羽子はご、男の帋鳶いかのぼり、見るものきくものめでたきなかに、初日はつひかげ花やかにさしのぼりたる、新玉あらたまの春とこそいふべけれ。