いとくち)” の例文
達磨だるまはそれぎり話題わだいのぼらなかつたが、これがいとくちになつて、三にんめしまで無邪氣むじやき長閑のどかはなしをつゞけた。仕舞しまひ小六ころくへて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
達磨はそれぎり話題にのぼらなかったが、これがいとくちになって、三人は飯の済むまで無邪気に長閑のどかな話をつづけた。しまいに小六が気を換えて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや御覽ごらんごと亂雜らんざつ有樣ありさまで」と言譯いひわけらしい返事へんじをしたが、それをいとくちに、子供こども世話せわけて、おびただしくかゝことなどを色々いろ/\宗助そうすけはなしてかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小夜子はゆかしい昔話のいとくちの、するすると抜け出しそうな咽喉のどおさえて、黙って口をつぐんだ。調子づいてかどを曲ろうとする、どっこいと突き当る事がある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや御覧のごとく乱雑な有様で」と言訳らしい返事をしたが、それをいとくちに、子供の世話の焼けて、おびただしく手のかかる事などをいろいろ宗助に話して聞かした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)