おさめ)” の例文
手ばしこく針を動かしているお島の傍へ来て、せわしいなかを出来上りのおさめものを取りに来た小野田はこくりこくりと居睡をしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ぜん申せし通り短気の大旦那さま頻に待ちこがれて大ぢれに御座候へば、その地の御片つけすみ次第、一日もはやくと申おさめ候。
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、一口に絵馬とはいうが、入念じゅねん彩色さいしき、塗柄の蒔絵まきえに唐草さえある。もっとも年数のほども分らず、おさめぬしの文字などは見分けがつかない。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一 言葉を慎みておおくすべからず。仮にも人をそしり偽を言べからず。人のそしりきくことあらば心におさめて人に伝へかたるべからず。そしりを言伝ふるより、親類ともなか悪敷あしくなり、家の内おさまらず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ぜん申せしとほ短氣たんき大旦那おほだんなさましきりちこがれておほぢれに御座ござ候へば、其地そのち御片おかたつけすみ次第しだい、一日もはやくと申おさめ候。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お爺さん、では、あの女の持ものは、お産で死んだ記念かたみおさめものででもあるのかい。」
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「軽少でございますが、どうぞおおさめを。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)