かまど)” の例文
厨のかまどの下には、どかどかとまきがくべられていた。こんなに景気よく窯に薪の焚かれたためしは、劉備が少年の頃から覚えのないことであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
階下の窓の塀はただかまどのためにこしらえたもので、二階の窓の厚いカーテンは商売物の菓子に日光が当たらないようにおろしてあるまでのことで
白い、さらしの襦袢じゅばん一枚だけで、小路に出ていた長屋の人達が、ようやく低いパンかまどのような家の中に入ってきた。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
内部は二重の板張りで、貝を焼くかまどが三基並んでい、おのおの貝殻を投げ入れる口と、焼きあげて出来た石灰をき出す口と、それらの下に、薪を燃やす大きな焚口たきぐちが付いていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
向島三囲みめぐりの土手下に楽焼のかまどを開いたのが明治三十年頃、文人墨客の出入り絶えず、文士では紅葉、思案、麦人なども遊びに来て、縁側の障子四枚はそれらの連中の楽書きでいっぱい
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
第四十四圖だいしじゆうしず)それはつくときかまどが、まへのものより進歩しんぽして、ときいぶされなかつたからでありまして、土器どき製作法せいさくほう一段いちだんすゝんだものとられますが、その土器どきかたちからいひますと
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
つい先刻、亡者どもがあばき合っていた粥鍋かゆなべかまどには、まだ鬼火のようなトロトロ火が残っていた。智深はそのまきの火を持って、庫裡くりに火を放った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内部は二重の板張りで、貝を焼くかまどが三基並んでい、おのおの貝殻を投げ入れる口と、焼きあげて出来た石灰をき出す口と、それらの下に、薪を燃やす大きな焚口たきぐちが付いていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それでかたち模樣もようなどもおなじものがすくなく、ひとつ/\ちがつてゐるのが普通ふつうでありますが、この時分じぶんには、まだ土器どきかまどられてゐなかつたとえ、のち時代じだいのように綺麗きれいいろ出來できてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しびれをきらして「まだか」と覗いてみたら、こんどは、文化かまどの陳列場にゐた。恐妻家にあらずとも、へツついを買ふ女房を待つ男などは、われながらいゝ圖ではない。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
台所へ入った閻婆は、鶏の肉をほぐしたり、かまどの火を見たりしながら、内心、舌を出していた。男と女とは、窒塞ちっそくする場所へ一ツに入れておけば自然なるようになるものというのが婆の哲学だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)