神仙しんせん)” の例文
たゞさへ神仙しんせん遊樂ゆうらくきやうこと私共わたくしどもは、極端きよくたんなる苦境くきやうから、この極端きよくたんなる樂境らくきやう上陸じやうりくしたこととて、はじめはみづかゆめでないかとうたがはるゝばかり。
森を高く抜けると、三国さんごく見霽みはらしの一面の広場に成る。かっる日に、手廂てびさししてながむれば、松、桜、梅いろ/\樹のさま、枝のふりの、各自おのおの名ある神仙しんせんの形を映すのみ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
帝はすでに六十に近かったが、気象のはげしさは壮時に超えている。神仙しんせんの説を好み方士巫覡ほうしふげきの類を信じた彼は、それまでにおのれの絶対に尊信する方士どもに幾度かあざむかれていた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
人の知らぬ小太郎山こたろうざんの峡をぬけて、おくへ奥へと二ほどはいった裏山うらやま、ちょうど、白姫しらひめみね神仙しんせんたけとの三ざんにいだかれた谷間たにまで、その渓流にそった盆地ぼんちの一かくそま猟師りょうし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神仙しんせんの実在を信じて「神仙記伝」と云う書物を編輯へんしゅうしていたと云う宮中掌典きゅうちゅうしょうてん宮地嚴夫翁みやじげんぷおうが明治四十三年、華族会館で講演した講演筆記の写しの中から得た材料によって話すことにする。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
人物が大きくって徳がある、英雄こうべをめぐらせばすなわち神仙しんせんである、西郷は乱世には英雄になれる、頭の振りよう一つでは聖人にも仙人にもなれるところが豪傑中の豪傑だ、おそらく
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乾符けんぷ年中のことである。神仙しんせん駅に巨きい蛇が出た。