矢石しせき)” の例文
「殿! 大坂陣で矢石しせきの間を往来せられまして以来は、また一段と御上達遊ばされましたな。我らごときは、もはや殿のお相手は仕りかねます」
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
最後の一隊二百人こそはいわゆる真個しんこの主戦隊であって、盛んに山上から矢石しせきを飛ばせ、敵をして山上へ近付けしめない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
燕王は護衛指揮張玉朱能等をして壮士八百人をして入ってまもらしめぬ。矢石しせきいままじわるに至らざるも、刀鎗とうそう既にたがいに鳴る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すると、轟音一声、たちまち四方のやぐらから矢石しせきは雨のごとく寄手の上に降ってきた。なお壕の附近にある兵の上には、大木大石が地ひびきして降ってきた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世に銃火器に精通くわしい者、明智に次ぐは滝川なり、という定評のあった過去を今も忘れてはいない。かたがたその城庫には多量な矢石しせき火薬の蓄蔵も必至と見られたので
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されども人智はかぎり有り、天意は測り難し、あにはからんや、太祖が熟慮遠謀して施為しいせるところの者は、すなわち是れ孝陵こうりょうの土いまだ乾かずして、北平ほくへいちり既に起り、矢石しせき京城けいじょう雨注うちゅうして
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
本能寺のほりに、狂兵の矢石しせきが飛び、叛逆はんぎゃくの猛炎が、一夜の空をがしてから後には——世人はあげて今さらのように、事前の光秀のこころを——その変心の時と動機を
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君もまたついには、武家の膺懲ようちょうおぼし立たれ、笠置かさぎこもり、隠岐ノ島に配所の月を見るなど、おん身に馴れぬ矢石しせきの御苦難をなされるようなことにもなってまいりまする
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天地も裂くばかりな轟音ごうおんとなって、矢石しせき鉄丸を雨あられと敵の出足へ浴びせかけた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あわれ、矢石しせきの中で、死ぬものならば、まだ死にがいがあるものを」と、天を恨み、また曹操の苛烈な命令にわめく声が、全軍に聞えたが、曹操は耳にもかけず、かえって怒り猛って
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するといきなり彼の軍へ向って城内から矢石しせきを浴びせかけて来たので
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)