つい)” の例文
丁度ちょうど自分の学校から出た生徒が実業について自分と同じ事をすると同様、乃公おれがその端緒たんちょを開いたと云わぬばかり心持こころもちであったに違いない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ついたけれども今とは違ってその時分はマダ鉄道のないときで、パナマに廻らなければならぬからサンフランシスコに二週間ばかり逗留とうりゅうして
咸臨丸その他 (新字新仮名) / 服部之総(著)
自分だって読んだ事もないのに鉄道馬車の中なんかでよせば善いと思ったが、仕方がないからウンウンと生返事をしていた。やがてケニングトンについた。ここで馬車を乗りかえる。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
油断して林道を踏み外すと全身雪の中に埋没してしまう。二時十五分漸く三宝さんぽう山の下まで辿りついたが右に下る道筋が容易に見付からないので、雪を掻いて地面を改めたりなどした。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
時は一げつすゑ、雪と氷にうづもれて、川さへ大方姿を隠した北海道を西から東に横断して、ついて見ると、華氏零下二十—三十度といふ空気もいてたやうな朝が毎日続いた。氷つた天、氷つた土。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
僕はその枕元にツクネンとあっけにとられてながめていると、やがて恍惚うっとりとした眼をひらいてフト僕の方を御覧になって、はじめて気がついて嬉しいという風に、僕をソット引寄て、手枕をさせて横に寐かし
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
ソコで無事に港についたらば、サアどうも彼方あっちの人の歓迎とうものは、それは/\実に至れり尽せり、この上の仕様しようがないと云うほどの歓迎。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
停車場までついて十銭払って「リフト」へ乗った。つれが三四人ある。駅夫が入口をしめて「リフト」のなわをウンと引くと「リフト」がグーッとさがる、それで地面の下へ抜け出すという趣向さ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
福澤の実兄薩州に在り亜米利加からかえって日本についたのはそのとしの六月下旬、天下の形勢は次第に切迫してなか/\やかましい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)