目触めざわ)” の例文
この大河内家の客座敷から横手に見える羽目板はめいた目触めざわりだというので、椿岳は工風をしてひさしを少し突出つきだして、羽目板へ直接じかにパノラマ風に天人の画を描いた。
日頃、日吉を、何かと目触めざわりにして、憎悪していた若侍の二、三名が、稽古槍を持って、そこを通りかけた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あゝ、御番ごばんの衆、見苦しい、お目触めざわりに、成ります。……くくるなら、其の刀を。——何事もなさけ卿様だんなさま思召おぼしめし。……乱心ものゆゑ穏便おんびんに、許して、見免みのがしてつてたも。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
黒いガラス窓の下隅に、何かしら目触めざわりな一物があった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
裸身はだかみの色の白さに、つい、とろとろとなって、面目なや、ぬらり、くらりと鰭を滑らかいてまつわりましたが、フトお目触めざわりとなって、われら若君、もっての外の御機嫌じゃ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あそこに、いているおうまやがある。目触めざわりにならぬように、その辺で控えておれ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて壇に登るべき立女形たておやまに対して目触めざわりだ、と逸早く取退とりのけさせ、樹立こだちさしいでて蔭ある水に、例の鷁首げきしゅの船をうかべて、半ば紫の幕を絞ったうちには、鎌倉殿をはじめ、客分として、県の顕官
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、両掌りょうて仰向あおむけ、低く紫玉の雪の爪尖つまさきを頂く真似して、「やうにむさいものなれば、くど/\お礼など申して、お身近みぢかかえつてお目触めざわり、御恩は忘れぬぞや。」と胸をぢるやうにつえで立つて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、両掌りょうてを仰向け、低く紫玉の雪の爪先つまさきを頂く真似して、「かようにむさいものなれば、くどくどお礼など申して、お身近はかえってお目触めざわり、御恩は忘れぬぞや。」と胸をじるように杖で立って
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
底知れずの水に浮いた御幣ごへいは、やがて壇に登るべき立女形たておやまに対して目触めざわりだ、と逸早いちはや取退とりのけさせ、樹立こだちさしいでてかげある水に、例の鷁首げきしゅの船をうかべて、なかむらさきの幕を絞つたうちには、鎌倉殿をはじめ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)