白気はっき)” の例文
旧字:白氣
道家は気がくと共に北の空に眼をやった。雲の間になった北斗の七星に白気はっきのようなものがうねうねとかかっていた。道家は刀をさやに収めて立った。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
博士の云うとおり、○○獣の落ちた穴の中からは、最前までゆうゆうと立ちのぼっていた白気はっきは見えなくなっていた。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中を一条ひとすじ、列を切って、どこからともなく白気はっきが渡って、細々と長く、はるかに城あるかたなびく。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとその印を結んだ手のうちから、にわかに一道の白気はっき立上たちのぼって、それが隠々と中空なかぞらへたなびいたと思いますと、丁度僧都そうずかしらの真上に、宝蓋ほうがいをかざしたような一団のもやがたなびきました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし濛々たる白気はっきの中に、鷺組のお絹たたずんで、お紋の行動を見ているらしい。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ぐつすりと寝込んで居た、仙台の小淵こぶちの港で——しもの月にひとめた、年十九の孫一の目に——思ひも掛けない、とも神龕かみだなの前に、こおつた竜宮の几帳きちょうと思ふ、白気はっき一筋ひとすじ月に透いて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其時そのとき、汽笛のような音響がした。死の谷に立ちのぼる白気はっき愈々いよいよ勢いを増した。怪人は一同に別れを告げて去った。一行は見す見すこの恐るべき殺人犯人を見遁みのがすより外に仕方がなかった。
科学時潮 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)