白毛しらが)” の例文
ほおの色つやもめつきり増し、白毛しらがも思ひのほかふえ申さず、朝夕の鏡にむかふたびに、これがわが顔かとわれながら意外の思ひを……」
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
吉田よしださんは、東京とうきょうへおいきなきるって、ほんとうですか。」と、年寄としとって、もうかみ白毛しらがえる先生せんせいが、いわれました。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
日南ひなたに霜が散ったように、鬢にちらちらと白毛しらがが見える。その時、赤蜻蛉の色の真紅まっかなのが忘れたようにスッと下りて、尾花のもとに、杭のさきとまった。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
アプトン・シンクレアが十年一日のように揶揄やゆしておかない「疲れたる事業家」の典型。経験と果断を示す白毛しらがまじりの髪。企業と大きく書かれたあから顔。
字で書いた漫画 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
もし赤い血にまみれ一本一本ピンと立った頤髯あごひげの根もとに、ひとつかみほどの白毛しらがを発見しなかったら、これを博士と認知するのが相当困難であったろう。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それには、ある貴族が早過ぎた埋葬に会って、出るに出られぬ墓場の中で死の苦しみをめたため、一夜にして漆黒しっこくの頭髪が、ことごと白毛しらがと化した事が書いてあった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この老人は、耳の辺まで垂れた白毛しらがを残して、てかてかに禿げ上っているが、身体は十一、二の子供くらい——どこからどこまでが、典型的な侏儒しゅじゅだったのである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そして彼は、次の大柄で痩形やせがたな、すでにほとんど白毛しらがまじりになった頭髪をした男に向って言った。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
白毛しらがまじりの髪が乱れかかっているところなど、物凄いような気がした。もしかこれが、狸か何かが来て母を喰い殺して、その代りに化けているのではないかと、私は思った。
私の母 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
笠松博士は、半分ほども銀色の白毛しらがの混っている長い顎鬚あごひげを静かに扱きながら、私達学生席の方を、学生の一人一人の顔を睨みつけるような眼をして、錆のある声で朗々と続けて行った。
「あんな白毛しらがのおやぢがお父さんだなんて、いやだな。」
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
顔に、ひげがぼうぼうとはえ、黒い鳥打帽子とりうちぼうしがぬげていてむき出しになっている頭髪とうはつは、白毛しらがぞめがしてあって、一見いっけん黒いが、その根本のところはまっ白な白毛であった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それではもう少し言わせてください」と、弁護士は言い、羽根布団を退け、ベッドの縁に腰かけた。むきだしの白毛しらがの脚は、寒さで震えていた。彼はKに、長椅子から毛布を取ってくれ、と頼んだ。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
頭髪は雀の巣のようにくしゃくしゃとなり、その中に白毛しらががかなり目立つようになった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
顔中白毛しらがの交った無精髭ぶしょうひげをモジャモジャとやし、大きい二つの眼はらんらんとして怪しい光を放ち、せぎすな身体には、古めかしい汚れた洋服をつけ、そして何が入っているのか分らないが
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)