“痴（ばか）” の例文
旧字：癡
精神の混沌（こんとん）としている広巳にはものを考える力がなかった。広巳は痴（ばか）のように女の顔を見た。お鶴がそれをもどかしがった。
春心 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
女房は痴（ばか）ばかしいと思ったが、へんなことで露見（ばれ）てもならんと思って、云うなりに裏の畑から一束の韮を刈って来てそれを洗って枕頭へ持って往った。
雀の宮物語 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「おい、何か云わないのか、俺だちが義侠心（ぎきょうしん）を出して、家庭を粛正してやろうとしてることが判らないのか、痴（ばか）」
春心 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「いや、けっしてそんな痴（ばか）な真似はいたしません」それから広栄に注意して、「それでは旦那、ちょっとお話をあげたいから、あちらへいらしてください」
春心 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「昼間出ようとすると、痴（ばか）なことを云うものだから、撲（なぐ）りつけてやったのだ、あいつ、この比（ごろ）、よっぽどヒステリーだから、剃刀（かみそり）を持ってかかって来るのだ」
一握の髪の毛 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「風邪を引こうと引くまいと、余計なお世話だ、彼方へ往ってすっこんでろ、何しに此処へ来るのだ、痴（ばか）」
狐の手帳 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
政雄はその日から痴（ばか）のようになって雑貨店の二階に寝ていたが、十日位してやっと精神が平常（もと）に復（ふく）して来た。精神が平常（もと）に復して来ると安閑（あんかん）としてはいられなかった。
女の怪異 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「お前は小供が可愛くないのか、何故（なぜ）そんな痴（ばか）なまねをする、しっかりおし、すぐ癒（なお）してやるから」
水郷異聞 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「喜兵衛殿が呼んだにしたところで、家を空けて来いとは云わないだろう、何を痴（ばか）なことを申す」
四谷怪談 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「……乃公（おいら）は、先月死んじゃった女房に逢いたくなって、江戸からわざわざやって来た者だが、考えてみれば、此方が痴（ばか）さ、やかましく云や、かえって耻さらしだ……」
立山の亡者宿 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「よけいなことを云うからだ、車屋の痴（ばか）なんかの云ったことを、お浚（さら）いするからいけないのだ」
藍瓶 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「どうしたの、今日は痴（ばか）に景気がいいじゃないの、何か掘りだし物でもあったのかい」
偶人物語 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「往ったのですけど、たてこんでて、待ってたけれど、前の人がどうしても出て来ないのですもの、痴（ばか）にしてるわ、まだ他にも料理番のような方と婢さんのような方が待ってるわ」
料理番と婢の姿 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
（どうせ、私は痴（ばか）ですよ、ばかだから、こんな目に逢（あ）うのですよ、坊や、おいで）
水郷異聞 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
彼は無駄骨を折るのが痴（ばか）ばかしくなったので、湖の中の堤（どて）を通って帰って来た。
牡丹灯籠　牡丹灯記 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「なに云ってるのだい、君こそ女（むすめ）も婆さんも判らないじゃないか、痴（ばか）」
草藪の中 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）、お前は、山崎の奥様とでも、おかしいと思っているのか、痴」
一握の髪の毛 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
（あんな男にふざけやがって、痴（ばか）、お前が厭なら、私がやるよ）
港の妖婦 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「何云ってるのだ、痴（ばか）、この忙がしいのに遊んでいられるか」
一握の髪の毛 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）、君のような下等な奴には、もうなにも云わない、ばか」
草藪の中 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「この痴（ばか）、何しに来たのだ、邪魔すると承知しないぞ」
狐の手帳 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）、お黙り、余計なことを云うと承知しないよ」
狐の手帳 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「へッ、痴（ばか）にするない、御人体（ごじんてい）がちがってらあ」
女の首 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）なまねをして、なにか飲んだようだ」
水郷異聞 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）、お前だって、これじゃないか」
女の首 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）」
萌黄色の茎 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)
「痴（ばか）」
妖影 (新字新仮名) ／ 田中貢太郎(著)