とっく)” の例文
「ですから私も熟々つくづく厭になって了ったんです。あの時とっくに別れる筈だったんです。でもやっぱりそうも行かないもんですからね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ええ、突然。本当を云うと、突然なんてものはとっくむかしに通り越していましたね。あっと云ってうしろを向いたら、もう結婚していたんです」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それのみならず、風の音信たよりに聞けば、お前はもうとっくかたづいているらしくもある。もしそうだとすれば、お前はもう取返しの付かぬ人の妻だ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
真実ほんとに、宗蔵の奴は困り者だよ。人間だからああして生きていられるんだ。これがもしけだもので御覧、あんな奴はとっくに食われてしまってるんだ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あなたが殺すなれば三年連添つれそってるからとっくに殺さなければならんに、貴方はだまされてるから、わしが其の事を忠告してうちへ帰れば、おあさどのが又いつもの口前くちまえ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もしも私が、その場合の犯人であったとしたなら、N駅へ着かない以前に、機関車を投げ出して、とっくの昔に逃げてしまいますよ。いや、全く、貴下の意見は間違いだらけだ。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「才ちゃんはとっくに帰りました、居やあしませんよ。さあ、さあ、もう聞かなきゃこうして、」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どうしたか。多分大阪あたりにいるでしょう。そんな古い口は、もうとっくのむかしに忘れっちゃったんで……」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
葬式の日は、親類一同、小さな棺の周囲まわりに集った。三吉が往時むかし書生をしていた家の直樹も来た。この子息むすことっくに中学を卒業して、最早少壮としわかな会社員であった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
只今、N駅からの電信に依ると、とっくの昔に着いて、と言うよりも、そこで恐るべき衝突事故を起してる筈の73号が、まだ不着だそうです!……事故は、途中の線路上で起ったのだ!
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
とっくさき、どこかへ、すっ飛んでいるんですから手係りはありやしません。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あんなものは、最早とっくにどうか成って了いましたあね」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)