“甜瓜（まくはうり）” の例文
其（そ）の踊（をどり）の周圍（しうゐ）には漸（やうや）く村落（むら）の見物（けんぶつ）が聚（あつま）つた。混雜（こんざつ）して群集（ぐんしふ）と少（すこ）し離（はな）れて村落（むら）の俄商人（にはかあきんど）が筵（むしろ）を敷（し）いて駄菓子（だぐわし）や梨（なし）や甜瓜（まくはうり）や西瓜（すゐくわ）を並（なら）べて居（ゐ）る。
土 (旧字旧仮名) ／ 長塚節(著)
一方甜瓜（まくはうり）の旨（うま）さうに熟して居る畠の間の細い路を爪先上りにだら／＼とのぼつて行くと、丘と丘との重り合つた処の、やゝ低く凹（くぼ）んだ一帯の地に
重右衛門の最後 (新字旧仮名) ／ 田山花袋(著)
南瓜（かぼちや）と甜瓜（まくはうり）と、おなじ畑（はたけ）にそだちました。種子（たね）を蒔（ま）かれるのも一しよでした。それでゐて大（たい）へん仲（なか）が惡（わる）かつたのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) ／ 山村暮鳥(著)
さるかはり、一度お客においで下すつたなら、それこそ、恐らく生まれてこのかた、つひぞ召しあがつたこともないやうな甜瓜（まくはうり）を御馳走いたしますよ。
ディカーニカ近郷夜話　前篇：02 はしがき (新字旧仮名) ／ ニコライ・ゴーゴリ(著)
其處へ、色のいゝ甜瓜（まくはうり）を盛つた大きい皿を持つて、靜子が入つて來た。『餘り甘味（おいし）しくないんですけど……。』
鳥影 (旧字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
甜瓜（まくはうり）の恰好をした博士の頭のなかには、歌といつては『百人一首』が二つ三つ転がつてゐるに過ぎなかつた。
茶話：02 大正五（一九一六）年 (新字旧仮名) ／ 薄田泣菫(著)
甜瓜（まくはうり）や西瓜や南瓜の堆積（やま）が、さながら黄金（きん）と赤銅の鋳物のやうに見えた。
ディカーニカ近郷夜話　前篇：03 ソロチンツイの定期市 (新字旧仮名) ／ ニコライ・ゴーゴリ(著)
甜瓜（まくはうり）は葉（は）つぱのかげで、その間（あひだ）、絶（た）えずくすくす笑（わら）つてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) ／ 山村暮鳥(著)
『何だ？　甜瓜（まくはうり）か！　赤痢になるぞ。』と信吾が言つた。
鳥影 (旧字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
或（あ）る日（ひ）、おてんば娘（むすめ）の甜瓜（まくはうり）が、かぼちやに毒舌（どくぐち）を吐（つ）きました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) ／ 山村暮鳥(著)