獄卒ごくそつ)” の例文
裸体にされた幾組の男女が、かしこの岩石の上、こなたの熱泉のほとりに引据ひきすえられている。牛頭馬頭ごずめずに似た獄卒ごくそつが、かれ等に苛責かしゃくしもとを加えている。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
幾十人の獄卒ごくそつに護られ、罪状を書いた高札を掲げて、江戸中目貫の場所を引廻しの上、鈴ヶ森の處刑場に着いたのは、巳刻半よつはん(十一時)少し過ぎでした。
踏海とうかいの策敗れて下田の獄に繋がるるや、獄卒ごくそつに説くに、自国を尊び、外国を卑み、綱常こうじょうを重んじ、彝倫いりんついずべきを以てし、狼の目より涙を流さしめたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ダンテスには恐ろしい獄卒ごくそつの見張りがあった。だが見張りがある方がまだしも仕合せだ。ひょっとして、頼みを聞いて、自由を与えてくれまいものでもないからだ。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かかるところへ、かすみのなかから、ポカリときだした一列の人かげがある。寂光浄土じゃっこうじょうど極楽ごくらくへ、地獄じごく獄卒ごくそつどもがってきたように、それは殺風景さっぷうけいなものであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
致せ湯責ゆぜめ責水責鐵砲てつぱう海老えび熊手くまで背割せわり木馬もくばしほから火のたま四十八の責に掛るぞヤイ/\責よ/\との聲諸とも獄卒ごくそつ共ハツと云樣無慘むざんなるかな九助を眞裸まつぱだかにして階子はしごの上に仰向あふむけに寢かし槌の枕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あの人は、骨のずいまで慾念で固まった、この世ながらの獄卒ごくそつだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
幾十人の獄卒ごくそつまもられ、罪状を書いた高札を掲げて、江戸中目貫めぬきの場所を引廻しの上、鈴ヶ森の処刑場に着いたのは、巳刻よつ半(十一時)少し過ぎでした。