減殺げんさい)” の例文
そうして演劇的になることは、踊りの特殊な表現能力を減殺げんさいすることになるからである。音楽に近い踊りにはその自身の象徴的な表現法がある。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
その反抗の精神を減殺げんさいしたるものなれば、封建社会の主権者は、この三者に向って、深く謝する所なかるべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
お綱は江戸女の勝気とはいえ、やはり女だけの力である、力量公平に減殺げんさいされているのでいずれともいえない、秘帖を中心に双鶏羽毛そうけいうもうを飛ばすありさまだ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この記事はイエスの価値ねうち減殺げんさいするものではありません。かえって我々に対する大なる慰藉いしゃと希望の源泉であります。家族、親戚、または郷里に対する伝道は最も困難な伝道です。
下女砧を打ち、主人行商より帰るでは、この句の情味は全く減殺げんさいされてしまう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
地震ぢしん其根源そのこんげん場所ばしよおいては緩急かんきゆう各種かくしゆ地震波ぢしんぱ發生はつせいするものであつて、これがあひともなつて四方八方しほうはつぽうひろがつてくのであるが、此際このさいきゆう振動しんどうをなす波動はどうみちすがら其勢力そのせいりよくもつとすみやかに減殺げんさいされるから
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
夫人も令嬢もいたく得意を減殺げんさいされて、気焔おおいに衰えたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しこうしてまた自から詫びて曰く、「挙世一士無し、吾にほしいままにせしむ第一流」と。マヂニー曰く、「余は活動を喚起する喇叭らっぱのみ、汝もし余が勢力を減殺げんさいせんと欲せは、なんみずから活動せざる」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それをたおしたからといって先の勢力が微塵も減殺げんさいされるわけでもない。いや、かえって吉岡一門の者を極度にいからせ、全体の戦闘力を狂瀾のように激昂させるにはなによりも役立ったろう。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう句法は今の人たちには多少耳遠い感じがするかも知れないが、この場合強いて目前の景色にしようとして、帯せぬ美人をそこに立たせたりしたら、牡丹の趣は減殺げんさいされるにきまっている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)