さだ)” の例文
頂にいたりて超然として一眸いちぼうのもとに瞰下みおろさば、わが心高きに居て、ものよくさだむるを得べしと思いて、峰にのぼらむとしたるなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「かたり申そうぞ。ただし物語に紛れて遅れては面目なかろう。翌日あすごろはいずれもさだめて鎌倉へいでましなさろうに……おくれては……」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
深く思ひさだめし瀧口が一念は、石にあらねばまろばすべくもあらざれども、忠と孝との二道ふたみちに恩義をからみし父の言葉。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
文三ははらうちに「おなじ言うのならお勢の居ない時だ、チョッ今言ッてしまおう」ト思いさだめて今まさに口を開かんとする……折しも縁側にパタパタと跫音あしおとがして、スラリと背後うしろの障子が
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しずかに考えさだむとて、ふらふらと仮小屋を。小親が知らぬ間に出でて、ここまで来つ。山の手の大通りはせきとして露ひややかなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せめて嵯峨の奧にありと聞く瀧口が庵室におとづれて我が誠の心を打明うちあかさばやと、さかしくも思ひさだめつ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ても亡びんうたかたの身にしあれば、息ある内に、最愛いとしき者を見もし見られもせんとからくも思ひさだめ、重景一人ともなひ、夜にまぎれて屋島をのがれ、數々のき目を見て
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
得三は他に一口ひとふり短刀かいけんを取りいだして、腰に帯び、下枝を殺さんと心をさだめて、北の台に赴き見れば、小手高うそびらじていましめて、柱に結え附け置きたるまま、下枝は膝に額をうず
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かず人情を棄てて公道に就き、眼前に下枝が虐殺さるる深苦の様を傍観せんか、と一度は思いさだめつ、我同僚の探偵吏に寸鉄を帯びずしてよく大功を奏するを、栄として誇りしが
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)