汲取くみと)” の例文
いや阿関こう言ふと父が無慈悲で汲取くみとつてくれぬのと思ふか知らぬが決して御前をかるではない、身分が釣合はねば思ふ事も自然違ふて
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何故夫が曾根への手紙を見せて、同時に家を解散すると言出したかは、彼女によく汲取くみとれなかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
居間へ這入はいッて手探りで洋燈ランプとぼし、立膝たてひざの上に両手を重ねて、何をともなく目守みつめたまましばらくは唯茫然ぼんやり……不図手近かに在ッた薬鑵やかん白湯さゆ茶碗ちゃわん汲取くみとりて、一息にグッと飲乾し
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……自分介抱するよって、一条ひとくさりなと、可愛い可愛い女房おかみはんに、沢山たんと芝居を見せたい心や。またな、その心を汲取くみとって、うずら嬉々いそいそお帰りやした、貴女の優しい、仇気あどけない、可愛らしさも身に染みて。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや阿關おせきこうふとちゝ無慈悲むじひ汲取くみとつてれぬのとおもふからぬがけつして御前おまへかるではない、身分みぶん釣合つりあはねばおもこと自然しぜんちがふて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
話そう話そうとして今までその話をする機会も思うように見出せなかったと言いたげな節子、その節子は母としての彼女の心を岸本に汲取くみとって貰うことを何よりうれしく思うという風であったが
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)