気競きお)” の例文
旧字:氣競
「そうよ」こものといに応じて一人の少年が気競きおって答えた。「うまく行きやあがった。風はねえけれど十軒は大丈夫だぜ」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おおい気競きおう処もあって——(いわしさばあじなどの幾千ともなく水底みずそこを網にひるがえるありさま、夕陽ゆうひに紫の波を飜して、銀の大坩炉おおるつぼに溶くるに異ならず。)
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、式台正面を横に、卓子テエブルを控えた、受附世話方の四十年配の男の、紋附の帷子かたびらで、舞袴まいばかま穿いたのが、さも歓迎の意を表するらしく気競きおって言った。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、気競きおって振返ると、髑髏が西日に燃えた、柘榴ざくろの皮のようである。連れて見返った、竹如意が茶色に光って、横笛が半ば開いた口の歯が、また黒い。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、なぜか気競きおって云って、片手で饅頭を色気なくむしゃりと遣って、息もかずに、番茶をあおる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とだけは決然として気競きおって云ったが、膝がえて、がくついて、ついした事にはかないで
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心は種々いろいろな処へ、これから奥は、御堂の背後うしろ、世間の裏へ入る場所なれば、何の卑怯ひきょうな、相合傘あいあいがさおくれは取らぬ、と肩のそびゆるまで一人で気競きおうと、雨もかすんで、ヒヤヒヤとほおに触る。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お貞はおもて晴々しく、しおれし姿きりりとなりて、その音調も気競きおいたり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気競きおって言うまで、私はいい心持に酔っていた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほっとしながら、小村さんは気競きおったように
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と笑って、気競きおって
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)