ついで)” の例文
此のあたりにかうよろしき人の住むらんを今まで聞えぬ事はあらじを、は都人の三七三つ山まうでせしついでに、海めづらしくここに遊ぶらん。
「古論」は「篇のついで、斉魯論と同じからず」(同上)と言われる。よほど体裁の異なったものであったことは認めねばならぬ。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
父蘭軒は前に書を茶山に寄せた時、何かのついでに長が身上に説き及んで、天癸てんきの新に至つたことを告げたのであらう。長は是年十四であつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
奉修の事へて帰るさ、行脚あんぎゃついでに此のあたりに立ちまはり給ひしが、此の仔細を聞き及ばれて不憫ふびんの事とやおぼされけむ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
天下のひろきには珍奇ちんきなる事おほきものなりけり云云。是も奇石きせきの一るゐなれば筆のついでにしるしつ。
おかしき男かなと思いてさまざまの事を問うに、極めて石をずる癖あるおじにて、それよりそれと話のついでに、平賀源内の明和年中大滝村の奥の方なる中津川にてかねりし事なども語り出でたり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしは事のついでに言つて置く。昔の漢医方時代には詩や離騒りさうの動植を研究した書が多く出でた。我万葉集の動植の考証の如きも亦同じである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
天下のひろきには珍奇ちんきなる事おほきものなりけり云云。是も奇石きせきの一るゐなれば筆のついでにしるしつ。
ついでを以て我が知らぬ新しき事もやあらんと装置しかけをも一ト揃購ひぬ。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「御内上様へついでに宜奉願上候。敬白。七月廿二日。菅太中晋帥くわんたいちゆうしんすゐ。伊沢辞安様侍史。猶々妻も自私わたくしより宜申上候へと申托まをしたくし候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)