まゆみ)” の例文
そうして、森からは弓材になるまゆみつきあずさが切り出され、鹿矢ししやの骨片の矢の根は征矢そや雁股かりまたになった矢鏃やじりととり変えられた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その岸のほとりに、まゆみの大きな木が茂っていた。黄と紫とに染め分けた小さな花を一杯つけていたが、既に果実を結んでるのもあって、紅い果肉も見えていた。
山吹の花 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ついさつきのまゆみの下あたりに来る頃には、麓の板橋から早川の漁村へかけて、あかりがちかちかと輝き出す。沖のぶり船にも灯が点る。かうして目が喜ぶ、目が喜ぶ。
蜜柑山散策 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
干葉ひばのゆでじる悪くさし」「掃けば跡からまゆみちるなり」「じじめきの中でより出するり頬赤ほあか
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
涼しい流れの所におもしろい形で広がったまゆみの木の下に美しい篝は燃え始めたのである。座敷のほうへはちょうど涼しいほどの明りがさして、女の美しさが浮き出して見えた。
源氏物語:27 篝火 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あくる日、金丸にともなわれて、彼は城へ行った。ここを檀風城だんぷうじょうというのはまゆみの木が多いからだろう。はぜは黄ばみ、海は青く、丘の城門からは、遠い小佐渡の山なみまでよく見える。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡瀬わたりぜに立てる 梓弓あづさゆみまゆみ
先ず兵士つわものたちは周囲の森から野牛の群れを狩り集めることを命ぜられると、次に数千の投げ槍とたてと矢とを造るかたわら、弓材となるあずさまゆみ弓矯ゆみためけねばならなかった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
この山そばだとて無論地辷じすべりで埋つて了つてゐたのを、やつとどうにか道をあけたのだ。仰ぐとまゆみには実が青くついてゐる。臭木の実の紅と黒とはもはや何の潤ひもなく萎へて了つた。
蜜柑山散策 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
石のつましめらふ見れば藍微塵まゆみの花のちりて時あり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
石のつま湿しめらふ見れば藍微塵まゆみの花のちりて時あり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まゆみよ、青い「猫の乳」よ
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)