機先きせん)” の例文
これは、そこにあった藤田伝五と並河掃部かもんの両部隊が、攻口を争って、混み合って来たため、その機先きせんを制した反撃であった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逡巡しゅんじゅんするはいたずらに時刻の空費と考えた栄三郎、躍動に移る用意に、体と剣に細かくはずみをくれだすと、機先きせんせいしてくるかと思いのほか、正体の知れない火事装束の武士
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
明日あす此方こつちから行くつもりであるからと、機先きせんを制していた。電話ぐちへはあによめあらはれた。先達せんだつての事は、まだちゝはなさないでゐるから、もう一遍よくかんがへ直して御覧なさらないかと云はれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしいま喰殺くひころされるのは覺悟かくごまへだが、どうせぬならたゞなぬぞ、睨合にらみあつてあひだに、先方せんぱうすきでもあつたなら、機先きせん此方こなたから飛掛とびかゝつて、多少たせういたさはせてれんとかんがへたので
まさか危険もあるまいと、ついゆるしてしまったのだが、あの子どもたちのおかげで、ぼくは、すっかりきみの機先きせんを制することができた。仏像が動きだしたときの、きみの顔といったらなかったぜ。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのため、上洛軍の兵員や将の選考も着々進められている由、その奇襲に驚くことなきよう、機先きせんを制して、対処の策を——とも、忠円の書は告げていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松村は、私の機先きせんせいして、非難を予防する様に云った。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
治良右衛門が機先きせんせいして怒鳴った。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)