未然みぜん)” の例文
すくなくとも、血を見るようなことは、例の遠くからの咳払いで未然みぜんに防ぐことが出来たかも知れないのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで原稿を書かないですむようになる。この方が、さばさばして、大いによろしい。その後、すべてこの手によって、不愉快から未然みぜんにのがれることにしている。
わたしのまじないは未然みぜんに防ぐにとどまる。もうこうなっては、わたしの力の及ぶ限りでない。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
門の内まで入れば、立ちどころに縄目をうけることを、彼もまた未然みぜんに覚っていたからである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し、つづいて持統より聖武に至るまで、持統の初期にお家騒動の多少のきざしが有っただけで未然みぜんに防がれ、それより後は「家」という足場自体に不安のきざしたことはない。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しゅう」をして、「家」を亡さしむるが故に——「しゅう」をして、不孝の名を負わしむるが故に、大事なのである。では、その大事を未然みぜんに防ぐには、どうしたら、いいであろうか。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また有珠山うすさん明治四十三年めいじしじゆうさんねん噴火ふんか數日前すうじつぜんから地震ぢしん先發せんぱつせしめたので、とき室蘭警察署長むろらんけいさつしよちよう飯田警視いひだけいし爆發ばくはつ未然みぜんさつし、機宜きゞてきする保安上ほあんじよう手段しゆだんつたことは特筆とくひつすべき事柄ことがらである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
勝頼かつより伊那丸いなまるのことを、未然みぜん暗示あんじした一ぎょうの文字はいま思えばあたっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし此心得このこゝろえ體得たいとくせられたならば、個人こじんとしては震災しんさいからしようずる危難きなんまぬかれ、社會上しやかいじよう一人ひとりとしては地震後ぢしんご火災かさい未然みぜん防止ぼうしし、從來じゆうらいわれ/\がなやんだ震災しんさい大部分だいぶぶんけられることゝおもふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)