かえ)” の例文
お父様をお見送りしますと私は、お床の間に立てかけてあった琴を出して昨日きのう習いました「あおいうえ」のかえの手を弾きはじめました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
むしろ後ろに反りかえっていると言ってもいい動勢をっていた。それを見るとすぐ、あの柳の丸材で作った、亀井戸天神かめいどてんじんのウソかえのウソを思出した。
木彫ウソを作った時 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
しかも、構内のことだから、貨物列車は貨車のつけかえの為に、丁度雪子の部屋の窓の外あたりで停車することがある。鶴子さん、君はあれを見たのですね。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
百両千両のかねではない。たかが銀一粒だ。これほどの家で、手許てもとに銀一粒のかえが無いなど冗談を
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さて此一掘ひとほりうみをはれば又それにならべりてはうみ、うみてはほり、幾条いくすぢもならべほりてつひには八九尺四方の沙中すなのなか行義ぎやうぎよくはらをのこらずうみをはる。あるひは所をかえてもうむとぞ。
「浜町公園のそばだし、今までわたしたちの知らない家だから、その心配はないわ。だから、ここのところ、方面をかえるにもいいし、十二月早々そうそう引越貧乏ひっこしびんぼうもしたくないからね……。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
更にといかえて、「私の拝借しているアノお座敷は中々立派ですね、お庭もお広いですね、実は昨夜、夜半よなかに眼が醒めたのでアノ窓をあけて庭を眺めてましたが、夜の景色は又格別ですね」
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
婿の名に書きかえるわけじゃないが、河野家においてさ、一人一人の名にして保管してあるんだから、例えば婿が多日しばらく月給に離れるような事があっても、たちまち破綻はたんを生ずるごとき不面目は無い。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)