曾我そが)” の例文
新字:曽我
無々という老翁の石城いしき郡に住する者、かつて残夢を訪ねてきて、二人でしきりに曾我そが夜討ようちの事を話していたこともあった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この題を得たる八公はちこう熊公くまこうの徒はなかなか以て「朝比奈あさひな曾我そがふ日や初松魚」などいふ句の味を知る者に非ず
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そこでいろいろ聞いて見ると、その恋人なるものは、活動写真に映る西洋の曾我そがなんだそうだ。これには、僕も驚いたよ。成程なるほど幕の上でには、ちがいない。
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敷皮しきがわ曾我そが」の重忠しげただ、「国姓爺合戦こくせんやかっせん」の和藤内わとうない、「二人袴ににんばかま」の高砂尉兵衛などを勤めたのであるが、その時代としては何分にも交通不便利の場所にあるので
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曾我そが討入うちいりがある。五郎も十郎も頼朝よりとももみな平等に菊の着物を着ている。ただし顔や手足はことごとく木彫りである。その次は雪が降っている。若い女がしゃくを起こしている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ひとまず宗像ノ大宮司だいぐうじをたのんで行こう。先触さきぶれには、南遠江守、曾我そがノ左衛門の両名駈けろ。……もし大宮司に二の足がみえたらすぐ戻って来い。攻め破って通るまで」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曾我そが植松うゑまつ、大工作兵衛、猟師金助、美吉屋五郎兵衛、瀬田の中間ちゆうげん浅佶あさきち、深尾の募集に応じた尊延寺村そんえんじむらの百姓忠右衛門と無宿むしゆく新右衛門とは獄門ごくもん、暴動に加はらぬ与党の内、上田
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
政府の手を煩わすに及ばず、孝子の義務として之を討取る可し。曾我そがの五郎十郎こそ千載の誉れ、末代の手本なれなど書立てゝ出版したらば、或は発売を禁止せらるゝことならん。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「それが忙しいんだよ。曾我そがの五郎が助かるか、殺されるかといふところだ——」
演劇は見たほど見ませんが、古いことですが明治座で左団次の曾我そがを見た時などは実に馬鹿らしくて堪りませんでした、団十郎は未だ見ないくらいですから演劇の話などは無理でありますけれど
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
同じいやなものにても壮士そうし役者か曾我そが位ならまだ/\どうにか我慢も出来もうすべく候へども自動車の運転手や活動弁士にてはいかに色事を浄瑠璃じょうるり模様に見立てたき心はありても到底色と意気とを
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
次にほゞ格之助と同じ支度の平八郎が、黒羅紗くろらしやの羽織、野袴のばかまで行く。茨田いばらたと杉山とがやりを持つて左右に随ふ。若党わかたう曾我そが中間ちゆうげん木八きはち吉助きちすけとが背後うしろに附き添ふ。次に相図あひづの太鼓が行く。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
苦力の曾我そが兄弟はまったく珍しかったかも知れません。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曾我そがの五郎と十郎とは一体どつちが兄さんです?」
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)