更科さらしな)” の例文
毘沙門隣の春月か通寺町の更科さらしなあたりで、三銭か五銭のザルそば一つ位で人生や文学を談じては、結局さびしく帰ったものだよ。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
そこぞと思ふ天井も、一面に黒み渡りて、年経としふる血の痕の何処いづこか弁じがたし、更科さらしなの月四角でもなかりけり、名所多くは失望の種となる。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
姨捨山おばすてやまの月(わが心慰めかねつ更科さらしなや姨捨山に照る月を見て)ばかりが澄みのぼって夜がふけるにしたがい煩悶はんもんは加わっていった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「さて、真砂町一丁目までくると、更科さらしなの前で駕籠をかえし、二階へあがってすずりと筆をかり、名札にちょっと細工をした」
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すると、この信濃国しなののくに更科さらしなというところに、おかあさんと二人ふたりらしている一人ひとりのお百姓ひゃくしょうがありました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
更科さらしなを出て、二人に別れてから、お菊ちゃんは、露八と二人で、芝浦の船茶屋へ寄ってみたが、斧四郎旦那も、お喜代も、先へ船で帰ってしまったということだった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天プラは橋喜はしぜん天金てんきん、鰻は神田川、竹葉ちくよう、大黒屋、蕎麦そばは団子坂の藪に麻布の更科さらしなに池の端の蓮玉庵れんぎょくあん、といった頃で、親がかりで小遣に不自由の無い私は、毎日毎日うまいもの屋をあさ
列に立ってバスにのって用達しに出かけて昼ごろになり、日比谷の公会堂のよこの更科さらしなを通りかかったら、青々と蔦をからめた目かくしをあふれてどっさり順番を待っている人々の列があった。
列のこころ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
同 千葉郡更科さらしな村大字大井戸字堂間表とうかんびょう
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
宮城野みやぎのの萩更科さらしなの蕎麦にいづれ
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
……大和田は程遠し、ちとおごりになる……見得を云うまい、これがいい、これがいい。長坂の更科さらしなで。我が一樹も可なりける、二人で四五本傾けた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『今し方、伏原さんは、永代河岸えいたいがし更科さらしなへ行きましたよ。へい、毎月の頼母子講で、いつも蕎麦屋そばやの更科と場所はきまって居りますから、多分そちらでございましょう』
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮城野の萩更科さらしなの蕎麦にいづれ
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
海底の琅玕の宮殿に、宝蔵の珠玉金銀が、にじに透いて見えるのに、更科さらしなの秋の月、にしきを染めた木曾の山々は劣りはしない。……峰には、その錦葉もみじを織る竜田姫たつたひめがおいでなんだ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつらの云い出しで、四人は、神明裏の更科さらしなへ入った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが心なぐさめかねつ更科さらしな
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
更科さらしなりゅうさん、」
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
更科さらしなりうさん、」
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)