やが)” の例文
三毛は暫く其處らをウソ/\彷徨さまようてゐたが、やがて絶望したのか、降連ふりしきる雨のなかを、悲しげな泣聲が次第に遠くへ消えて行つた。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
是れ畢竟努力の絶えざる堆積は、やがて物質上にも變化を與ふる例證として認識するに足るではないか。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それから、何だろうかと思っていると、やがてその女郎屋の主人が、釣棹つりざお悉皆すっかりまとめて、祖父じじい背後うしろへやって来たそうです。それで、「もう早く帰ろう。」というんだそうです。
夜釣の怪 (新字新仮名) / 池田輝方(著)
腦髓なうずゐや、視官しくわん言語げんご自覺じかく天才てんさいなどは、つひにはみな土中どちゆうはひつてしまつて、やが地殼ちかくとも冷却れいきやくし、何百萬年なんびやくまんねんながあひだ地球ちきうと一しよ意味いみもなく、目的もくてきまはくやうになるとなれば
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こんな出入に口無調法な父親は、さも困ったような顔をしていたが、やがて井戸の方へまわって手顔を洗うと、内へ入って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして怠屈な半日をいらいらして暮しているうちに、やがて昼を大分過ぎてから二人は女中に案内されて、お島の着替えや水菓子の入ったかごなどをさげて、どやどやと入って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
曲がりくねった野道を、人の影について辿たどって行くと、やがて大師道へ出て来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)