ととの)” の例文
旧字:
これをもって考うるに、ひっきょう一身を修め一家をととのうるは、国を治め天下を平らかにするゆえんである。大学にいう
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
自分の一身を修め自分の一家をととのえる事も出来ない人が一国の政治を論議するなんぞとおおきな顔をしているし
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
各その家その家をととのえ夫を敬い子を教え候て、親様の肝をやかぬようにするが第一なり。婦人は夫を敬う事父母同様にするが道なり。夫を軽く思う事当時の悪風なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
実家さとにありけるころより継母のまつりごとを傍観しつつ、ひそかに自家のけんをいだきて、自ら一家の女主あるじになりたらん日には、みごと家をととのえんものと思えるは、一日にあらざりき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
家の内のととのわないで、妻を去るに至るの何のということは、よくよくの事でなければ、一家一門に取って取分け世間の非難を被って、非常に不利であることを云いもしたろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかして羅瑪のわざわいまぬかれず。しかれども一日も王者なかるべからず、また一日も教なかるべからず。それ教なるもの人心をおさむるの具なり。心正しければ身おさまる。身脩れば家ととのう。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
捨てられし後は国を慕うはますます切なり、朝は送るに良人りょうじんなく、夕は向うるに恋人なく、今は孤独の身となりて、ととのうべきの家もなく、閑暇がちにて余所事よそごとに心を使い得るにもせよ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
身いまだ修らず、一家もとよりととのわざるに、治国、平天下を考えなければならぬ場合も有るのである。むしろ順序を、逆にしてみると、爽快そうかいである。平天下、治国、斉家、修身。いい気持だ。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
其の国を治めんと欲する者は、先ず其の家をととのう。其の家を斉えんと欲する者は、まず其の身を修む。身修まってのち家斉い、家斉うて後国治まり、国治まって後天下平らかなり。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
伯魚が出母の死に当り期にしてなおこくせるは、自然であるが、孔子が幵官氏を出し玉うたのは、因縁不和とよりそれがしには合点がならぬ。聖人の徳、家をととのうるに足らなかったとは誰も申し得ぬ。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それ律は大法を設け、礼は人情にしたがう。民をととのうるに刑を以てするは礼を以てするにかず。それ天下有司に諭し、務めて礼教をたっとび、疑獄をゆるし、朕が万方ばんぽうともにするをよろこぶの意にかなわしめよと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)