据眼すえまなこ)” の例文
愛吉に、訳を尋ねると、やっこ人間の色はねえ。据眼すえまなこになって饒舌しゃべった、かねての相談、お夏さんのはかりごとというのをお聞きなさい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大船、おおふなと申す……驚破すわや乗越す、京へ上るわ、とあわただしゅう帯を直し、棚の包を引抱ひんだいて、洋傘こうもり取るが据眼すえまなこ、きょろついて戸を出ました。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仁右衛門ぶるぶるとなり、据眼すえまなこじっと見た、白い咽喉のんどをのけざまに、苦痛に反らして、黒髪を乱したが、唇をる歯の白さ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ひゃあ、」と据眼すえまなこ呼吸いきを引いて、たじたじと退すさると、駅員は冷々然としてと去って、入口へ向いて、がらんがらん。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女中が苦笑いして立とうとすると、長々と手を伸ばして、据眼すえまなこで首を振って、チョ、舌鼓を打って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はてな、で、その筋を据眼すえまなこで、続く方へ辿たどってくと……いや、めましたて。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火事の最中、雑所先生、はかま股立ももだちを、高く取ったは効々かいがいしいが、羽織も着ず……布子の片袖引断ひっちぎれたなりで、足袋跣足たびはだしで、据眼すえまなこおもてあいのごとく、火と烟の走る大道を、蹌踉ひょろひょろ歩行あるいていた。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
い心持に眠気がさすと、邪魔なあかりひじにかけて、腕を鍵形かぎなりに両手を組み、ハテ怪しやな、おのれ人魂ひとだまか、金精かねだまか、正体をあらわせろ! とトロンコの据眼すえまなこで、提灯を下目ににらむ、とぐたりとなった
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)