振袖姿ふりそですがた)” の例文
ふとくびすかえして、二あしあしあるきかかったときだった。すみ障子しょうじしずかにけて、にわった春信はるのぶは、蒼白そうはくかおを、振袖姿ふりそですがた松江しょうこうほうけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
振袖姿ふりそですがたのすらりとした女が、音もせず、向う二階の椽側えんがわ寂然じゃくねんとして歩行あるいて行く。余は覚えず鉛筆を落して、鼻から吸いかけた息をぴたりと留めた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
振袖姿ふりそですがたの恩田は、そんなことを言いながら、両手の指で空気をつか恰好かっこうをして、隅っこの蘭子の上へ、巨大なけだもののように、のしかかって行った。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
十七日は最終の晩だというので、よいのうちは宿の池のほとりで仕掛け花火があったりした。別荘の令嬢たちも踊り出て中には振袖姿ふりそですがた雛様ひなさまのようなのもあった。見物人もおおぜい集まって来た。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
芳町よしちょう蔵前くらまえわかわかれにむようになったばかりに、いつかってかたもなく二ねんは三ねんねんは五ねんと、はやくも月日つきひながながれて、辻番付つじばんづけ組合くみあわせに、振袖姿ふりそですがた生々いきいきしさはるにしても
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)