拳闘けんとう)” の例文
トビイ・モンクスは、まるで仁王におうのような大男だ。拳闘けんとうで耳がぺちゃんこにつぶれている。鼻も拳闘でぐんと曲がったすごいでこぼこ顔。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
「さあ、拳闘けんとうの第一選手だというんだから、いばらしておくさ」と、ぼくは、ブルなんかなんとも思ってない。すると
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
拳闘けんとう某氏ぼうしのように責任を感じて丸坊主まるぼうずになったひともいましたが、やはり気恥きはずかしさやひがみもあり張りめた気も一遍いっぺんに折れた、がっかりさで
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
小関氏ただ一人をのぞいては、満場笑いと拍手のうずだった。とりわけ朝倉先生と大河無門の拳闘けんとうでもやるようなぎこちない手ぶりが爆笑ばくしょうの種だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と両手のこぶしをさかだてて動かしながらつめよってくる。拳闘けんとうのまねだ。活動で見おぼえて始終稽古しているから、堀口は強いということになっている。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのうえ、おとうさんが、もと拳闘けんとう選手だったので、ときどき拳闘をおしえてもらうことがあり、学校でも、井上君にかなうものは、ひとりもありません。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼には活動が必要だった。そこで彼は猛然と運動スポーツに熱中しだした。あらゆる運動を試みあらゆる運動を行なった。撃剣の試合や拳闘けんとうの競技に熱心に通った。
人間の撃剣や拳闘けんとうでも勝負を決する因子は同じであろうが、人間には修練というものでこの因子を支配する能力があるのに動物はただ本能の差があるだけであろう。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その晩、庄造よりも二時間程おくれて帰って来た福子は、弟を連れて拳闘けんとうを見に行った話などをして、ひどく機嫌きげんが好かった。そして明くる日、少し早めに夕飯を済ますと
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼は不幸にして若いときに立派な護身術の修練をし、手足や武器を用いる技に熟し、拳闘けんとうや棍棒術の達人となったので、それ以来ずっと面倒の多い生活をおくっているのである。
なぜだといったら、『日本の柔道は身をまもる術だし、拳闘けんとうとはやり方が違う。それに拳闘家けんとうかとの試合を見世物にすることは、日本柔道の道にはずれる』
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
全裸の男性の拳闘けんとう、レスリング、そして、その勝負に金銀、宝石、はては貞操をさえけたこともあります。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれの不器用ぶきようさは朝倉先生どころではなく、その手振りはまるで拳闘けんとうでもやっているような格好であり、その足の運びには、四股しこをふむ時のような力がこもっていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
拳闘けんとうの第一選手だし、おまけに、非常ならんぼうものだ。だれ一人、ブルにかなうものはない。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
あんなに猟や競馬や宴会や拳闘けんとうにばかり凝っていて、いいことはあるまいと思っていたが、要するに、ブルさんの地所はじっさい立派で、今まで長いこと御家のものだったが、しかし
正三君はあやうくたおれるところをよろめいて、やもりのように小使い部屋べやの側面にへたばりついた。堀口生は投げそこねたとみると、こぶしを固めて突きにきた。活動で見おぼえた拳闘けんとうの応用だ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
すっかりひげってのっぺりした顔をし、息が短く、丁寧ていねい大袈裟おおげさな子供じみた言葉つきで、ファルネーゼのヘラクレス像に見るような胸の筋肉をそなえ、拳闘けんとうや棒術にはみごとな力をもっていたが
拳闘けんとうというものはまだ一度も実見したことがない。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
さいぜんからの話しぶりでもわかる通り、この拳闘けんとう選手みたいな大男は、悪人に似合わぬお人よしとみえる。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
拳闘けんとう柔道じゅうどうでは、そのやり方がまるでちがう。拳闘はなぐるいっぽうである。柔道は投げる、おさえこむ、める、ぎゃくをとるというわざだ。どうして試合をしたらいいか。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
いよいよ、大さわぎになって、ミス・ネールという金持ちのおじょうさんは、この試合に二十万円の懸賞けんしょうを出すと、これまた新聞に書かせてしまった。なにしろブルは、拳闘けんとうの第一選手だ。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
文代さんの美しい顔は拳闘けんとう選手のように傷つき、着物はズタズタに裂け破れた。あばら骨が浮き上がるほどの息遣いに、のどれ、舌は黒コゲのようにからびてしまった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
井上君は中学一年ですが、おとうさんが、まえに拳闘けんとうの選手だったので、おとうさんにならって、拳闘ができるのです。それに、少年探偵団では、いちばん力の強い少年です。
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
グローブをはめない拳闘けんとう、それにレスリング、角力すもう、柔道、どんな手を用いても反則ではありません。一方がまったく闘志を失って、ふたたび立つことができなくなるまでの戦いです。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その時、縁側の障子のかげに身をひそめていた男が、小豆あずき色のジャケツにカーキ・ズボンの拳闘けんとう選手みたいな大男が、すばやく明智の背後に忍び寄って、手にした棍棒こんぼうを勢いこめて振りおろした。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)