かゝわ)” の例文
にもかゝわらず滋幹は、ひそかに敦忠の人柄に好感を抱き、蔭ながらその人の幸福を祈りつゝ、常にその行動を見守っていたのであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼等かれらむし自分じぶんうちつくつたものゝはう佳味うまいにもかゝわらず大勢おほぜいともさわぐのが愉快ゆくわいなので、水許みづばかりのやうな甘酒あまざけ幾杯いくはいかたむけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
し子供が出来たなら、男女なんにょかゝわらず其の子をもって家督と致し家の再興を頼むと御遺言書にありましたが、事によると殿様の生れがわりかも知れません
飛離とびはなれて面白いでもなくそろへどもほかの事の仕方しかたがないにくらべそろへばいくらか面白かりしものと存候ぞんじそろたゞ其頃そのころ小生せうせいの一致候いたしそろ萬場ばんじやう観客かんかくの面白げなるべきにかゝわらず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
猛烈に顔をしかめましたが、私はそれにもかゝわらず泰然自若として検眼して居ましたから、遂に我慢がしきれなくなったと見えて、「まあ、随分のろいですこと」と、かん高い声で申しました。
痴人の復讐 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
にもかゝわらず、己はどうしてもそうする事が出来なかった。どうしてもそうする事の出来ないような、不思議な力が、一方に於いて己の心を抑えて居た。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
にもかゝわらず、自分は実業家として成功するのに、最も不適当な、むしろ最も有害な素質を備えた人間だからである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼がしきりに否定しようとするにもかゝわらず、月の面をおゝうていた雲のうすものが少しずつがれて行くに従い、だん/\とその人影は刻明になって来て、半信半疑であったものが
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)