こしら)” の例文
莫迦ばかなことをいっちゃいかん。もっとも、パルプでこしらえたあのやすい本なんかには出とりゃせんだろうが、わしは嘘をいっているのではない」
花笠を造つたり、小さな山車だしこしらへたり、山車の屋根を飾る挿花さしばなを考へたりして、キヤツキヤツと騒いで居るのでした。
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
「節——お父さんにこしらへて頂いた物を出してお目に掛けな——諸方はう/″\から祝つて頂いた物もお目に掛けたらからう。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
真紀 だからさ、一体どうする考え? そんなに次から次へお人形の着物ばかりこしらえて、お人形屋でも出すつもり?
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
けれどもその人は模造の革でこしらへて、その表面にヱナメルを塗り、指ではじくとぱか/\と味気ない音のする皮膚で以て急によろはれ出した気がするのです。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
やがて二かい寐床ねどここしらへてくれた、天井てんじやうひくいが、うつばり丸太まるた二抱ふたかゝへもあらう、むねからなゝめわたつて座敷ざしきはてひさしところでは天窓あたまつかへさうになつてる、巌丈がんぢやう屋造やづくり
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「図面の写しをこしらえたりしていたので、おそくなりました、将来のことも考えて、頭書のような文面にして置きました——ちょっと挨拶あいさつして行って貰いましょうか」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
いざと云えば、火水の中へも飛込む肚をこしらえるものだ。お前なぞ、その肚が、一番に出来とらんぞ
寛永武道鑑 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
○自分でこしらえたものくらい気に入るものはない。洋服でも、お友達でも。
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
未納 (額を押えて)皺なんかこしらえてみせたって駄目よ、お姉さん。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
「ちと、おかしいね。どこか、逃げ道が、こしらえてあるのだろうか」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、十五両がとこ、こしらえて参りましたよ。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
日覆いの葭簾を三分ほどめくって、覗く隙間すきまこしらえて待っていると、列を作った三匹の雄魚は順々に海戦の衝角突撃しょうかくとつげきのようにして、一匹の雌魚を、柳のひげ根のたばの中へ追い込もうとしている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)