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愁然
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しゆうぜん
と
言ひながら
今しも
懷かしき
母君の
噂の
出でたるに、
逝にし
夜の
事ども
懷ひ
起して、
愁然たる
日出雄少年の
頭髮を
撫でつゝ
前の
程より
愁然と
頭を
埀れて、
丁度死出の
旅路に
行く
人を
送るかの
如く、
頻りに
涙を
流して
居る。
『あら、
父君は
單獨で
何處へいらつしやつたの、もうお
皈りにはならないのですか。』と
母君の
纎手に
依りすがると
春枝夫人は
凛々しとはいひ、
女心のそゞろに
哀を
催して、
愁然と
見送る
良人の
行方