悧口りこう)” の例文
私が見ただけの事をすっかりお話しすれば、あなたがたはびっくりなさると思いますが、話は少ないほうが悧口りこうだと言いますからね。
手をはぶくことに悧口りこうになることは、出来を愚かにしてしまいます。山中の漆器は余りにも安ものを心掛けた傾きがあります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「貧乏になるのも洒落しゃれているぜ。世帯の苦労をさせると、第一娘がもう少し悧口りこうになるよ、貧乏の味のよさを知らないのが金持の落度なんだ」
大変悧口りこうさうなひげを生やしたリスさんですから、本を買つてくれるだらうと思つて「リスさん、本を買つて下さい。私はりつぱな本屋さんです」
兎さんの本屋とリスの先生 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
ところがどうでしょう、悧口りこうじゃありませんか、どのみち、事面倒と見たから、あの方は、その晩のうちにこの土地をすっぽかしてしまいました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この教授は悧口りこうな人物で、あまりに深く他人の秘密を見透し過ぎるように思われたので、彼は初対面以来、この人をそれとなく避けていたのである。
ここはこの老女の顔を立てて素直に手を引いた方が結句悧口りこうかも知れないと思ったので、彼はいさぎよく承知した。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
少なくとも彼の地位以上の教育を受けた人物であると思われるが、彼は多数のなかにたまたま少しく悧口りこうな者がいても、そんな人間は必要でないと言った。
帳場に寄りかかりながら怪訝けげんらしい微笑を浮かべて私を見ているので、私はあの空家を工場にしているのは悧口りこうなやりかただと、私の意見をくり返して言った。
いかにその演説が教育に関係するを要しないとても、青年が主賓しゅひんになっている以上は、まねかれる弁士はただ能弁のうべんだとか悧口りこうだとかいうだけの資格では足りない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
内省とか羞恥しゅうちとか、いわば道徳的観念とでも呼ばれるものに余程標準の狂ったところがあって、突拍子とっぴょうしもない表出には莫迦だか悧口りこうだか一見見当もつかなかった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これだけ世の中が開けて来たのだと人々はいう。人間が悧口りこうになったので、胡弓や鼓などの、のびのした馬鹿らしい歌には耳をさなくなったのだと人々はいう。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
というのは天帝如来、そいつを拝むようなまねをして、毛唐の連中のご機嫌をとり、うまく通商貿易をし、ボロい儲けをしようとしたのさ。実際きゃつらは悧口りこうだったよ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そういう彼女の方がしゃべりたてる彼女よりも、はるかに悧口りこうではるかに同情が寄せられるように、クリストフには思われた。彼は以前よりも偏見の少ない眼で彼女をながめた。
単に情痴ならばあのような破目はめに落ちずとも、少くとも彼ほどの男なら、もっと悧口りこうに身を処することが出来る筈なのだ。もっと深い処で彼は身を賭けたに違いないのだ。しかしその詳細しょうさいは判らない。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
非常に悧口りこうな子だったと家の人達は言っている。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
『千枝子さんはお悧口りこうね。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
兎はお悧口りこう
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
「貧乏になるのも洒落しやれてゐるぜ。世帶の苦勞をさせると、第一娘がもう少し悧口りこうになるよ、貧乏の味のよさを知らないのが金持の落度なんだ」
だが同時に平易でないが故に、いかにかどが多いであろう。そこには悧口りこうさから来る意識の患いがあまりに多い。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
悧口りこうなようで、なんだか馬鹿にされている、上手な猟師のつもりで、一方の兎を思いきって、一方だけ確実に手に入れる策戦に出でたことの思いきりを、我ながら腕前と信じていたのが
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『お悧口りこうにして居た。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
五人の中で悧口りこうな信太郎は、隙を見て土藏を脱出ぬけだしましたが、村右衞門におどかされた言葉が恐ろしくて祕密をもらす間もないうち、鑄掛屋いかけやの權次にさそひ出され
悪い意味で作り方が悧口りこうになったため、正直に手間をかける仕事が少くなってきました。買手にも罪はあるでしょうが、それよりも問屋とんやが粗末なものを強いる結果だと申す方が本当でありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「この女は悧口りこうで愛嬌があつて、色つぽくて、手が早くて、噛みつかれると命が危ないから、まむしのお源といふんださうですよ。大友瀬左衞門もこの女には一目も二目も置く」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「俺は上総屋へ行く。音松を刺した匕首が、どこかに隠してあるはずだ。捨てるにしちゃ下手人は悧口りこうすぎる。それから、和七と仙之助の外に、昨夜そっと脱け出した奴があるかも解らない」
捜してみるがいい。お留は悧口りこうなようでも下司げすな女だ。定吉を殺して三十両の金を奪ったのを、捨て兼ねて、どこかに隠しているに違いない。その金が見付かったら、その場でお留を縛るんだぞ