恵比須えびす)” の例文
旧字:惠比須
嫁取り、婿取りの相談、養子の橋渡し、船の命名進水式、金比羅こんぴら様、恵比須えびす様の御勧請ごかんじょうに到るまで、押すな押すなで殺到して来る。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「けれども面白いんですよ。釣竿さえ持っていればニコ/\ものです。あれで鯛を釣って来れば真正ほんとうのお恵比須えびすさんでさあ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
カケダイコ 正月歳神としがみ様や恵比須えびす大黒様に、掛大根と称して二本、ちょうど掛の魚のように竿さおに掛けて上げる地方がある(岡山県川上郡など)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
病院は西宮の恵比須えびす神社の近くにあったので、いつも彼女は国道の札場筋ふだばすじから尼崎までバスに乗って行ったが、その往復の道で三度奥畑に邂逅かいこうした。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
能面の二倍ほどもある大きさのもので、欄間一杯の扇の真中に恵比須えびすと大黒との像のはいった小箱をわきにして、にこやかな永遠の笑顔を見せていた。
阿亀 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
土間には大勢おおぜい女の人達が立ち働いて煮焚にたきをして居る。彼等夫妻はあがって勘五郎さんに苦しい挨拶した。恵比須えびすさまの様な顔をしたかみさんも出て来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
秋も漸く深い夜を、東山の影は黒々と眠って居たが、恵比須えびす講の灯に明るい四条通り、殊に新京極の細い小路にはいる辺りは、通り切れぬほどの人出であった。
六日月 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
ハテ恵比寿麦酒ゑびすびーる会社長くわいしやちやうで、日本にほん御用達ごようたしおこりは、蛭子ひるこかみが始めて神武天皇じんむてんのうへ戦争の時弓矢ゆみやさけ兵糧ひやうろう差上さしあげたのが、御用ごようつとめたのが恵比須えびすかみであるからさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
たとえば船乗は船魂ふなだま神社をまつり、大工左官は聖徳太子をあがめ、魚屋は恵比須えびすを、裁縫師は伎芸天ぎげいてんを、三味線や琴の師匠は吉祥天きっしょうてんを祭ると云ったように、それぞれの職域を神聖なものとして
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そこで踊りの面々が、おのがじし踊り出すと、恵比須えびすめんをかぶったのが、いちいちその間を泳いであるいて、この踊りを訂正する。手のさし方、足の踏み方を、模範を示して直してあるく。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)